ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界

「桜の花は白いと思っていた」
~不便、違和感、間違いさまざま~ 【第8回】

 ◇理解広めて配慮・工夫を

 ゲーム話はこの程度にします。先ほどの箇条書きの最初にあった人間関係の三つ。これこそが、色覚特性が理解・周知されていない状況を端的に表しています。子どもやお年寄りに優しく向き合うのと同じ感覚で誰もが気遣いでき、当たり前に接することができれば、カムアウトもたやすく、色覚特性が「個性」になるのだと思います。そのためには、やはり相互理解を深めていかなければなりません。しかし、みんなが私のように調べて伝えられるようにしたり、仕事に生かしたりするわけではありません。少なくとも私の周りにそんな人はいませんでした。色覚特性を持っている人こそ、もっと自分のことを知る必要があります。「私は困っている。気遣ってほしい。でも具体的に何をしてもらいたいか思い浮かばない」では話になりません。

 そういう意味でも、「カムアウト後、『これ何色に見える?』というクイズを延々とやらされる」のはチャンスです。かく言う私もカムアウトするたび、職場が変わるたびに付き合わされ、へきえきした時期はあります。ただ、見方を変えれば「自分のことを理解してくれようとしている行動」と言えます。その機会を活用し、失敗談を話すのもいいでしょう。仕事であれば、「私にはあの色分けされているファイルの区別は難しい」と打ち明け、環境整備につなげるチャンスにもできます。トイレのマークの「男性は青、女性は赤」のように、文字で表記しなくても直感的に分かる「色分け」は非常に便利です。

 私のお店でも色分けによって情報を判断するシステムは随所にあり、いろいろな工夫でどうにかなります。例えば、赤い字はあまり目立たないので太く書く、色分けされたファイルを青や黄など判別しやすいものに変える、鮮明な色のシールを使うなど。最近では左の写真のように、カラーユニバーサルデザイン(CUD)対応のシールも出ています。これもよく考えられています。先ほどのゲーム画面同様に赤に黄を混ぜて朱色っぽく、また緑に青を混ぜてエメラルドグリーンのようにすることで、赤、緑とも見分けやすくしているのです。私自身は使う用途がありませんが、なんだかうれしくてつい買ってしまいました。

 何度も言っていますが、一番大事なのは周知。色覚特性を持っている人が自分自身のことを説明できるようになれば、自然とカムアウトしやすくなりますし、そういう人が増えれば周囲の認知度も高まっていきます。その後にCUDです。CUDはざっくりした言い方をすれば、「色覚特性を持っている人にも見分けやすい配色、デザインを心掛けよう」ということです。高いハードルではなく、色覚の知識があれば誰でも簡単にできます。今後、こうした考え方を道徳の授業で取り扱ってもらえるようになるといいかもしれません。

 次回は、これから先のことを語りたいと思います。今回の連載を概括しつつ、CUDが進展するために私たちが認識・実施すべきこと、カラーバリアフリーの実現に向け私が望むこと、私たちの生活を取り巻く色とその取り扱い方などに触れます。未来をどう変えていくのか。最後のお話となります。(了)

 〔お断り〕この連載では、文章の趣旨を的確に伝えるため、現在は使用を控えるようになった「色盲」「色弱」という言葉を必要に応じて用いています。

 長瀬 裕紀(ながせ・ゆうき) 1級眼鏡作製技能士。過去に量販眼鏡店に就職するも勉強不足を痛感。修行のため眼科コメディカルとして10年弱勤め、年間3500人以上の目のケアに携わる。認定眼鏡士SS級のプロとして現在は吉祥寺の眼鏡店(グラストリーイカラ https://www.g-ikara.jp/)で勤務し、2022年度から始まった国家資格「眼鏡作製技能士」の試験に合格した。自身の体験談を踏まえた色覚特性のブログが人気を博し、数多くの問い合わせや相談が寄せられている。

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