症状性精神障害(脳以外のからだの病気に原因する精神障害)

 脳は、内分泌機能、栄養状態、酸素供給、体温などの影響を受けやすい、きわめてデリケートな組織です。そのために、これらの要因に変化をきたすような病気や病態があると、精神症状が出やすくなります。このような身体疾患に伴う精神障害を症状性精神障害と呼んでいます。この病名は、幻覚、妄想、興奮、認知症などの重いレベルの症状が出てくる場合につけられます。したがって、身体疾患に伴い不安や抑うつなどの症状がみられる場合には該当しません。

■内分泌機能の障害
 甲状腺機能亢進(こうしん)症(甲状腺機能亢進症)や低下症では、統合失調症や気分障害に似た精神症状が出てくることがあります。
 副腎皮質機能亢進症や低下症でも統合失調症や気分障害に似た精神症状が出てくることがあります。治療は、原疾患の治療とともに抗精神病薬、抗うつ薬、気分調整薬が適応されます。
 また、副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)はいろいろな病気で処方されますが、この薬により精神障害が出やすいことが知られています(ステロイド精神病)。症状は統合失調症や気分障害、さらには意識障害をベースとした精神症状など多様なあらわれかたをします。治療はステロイド薬の減量と薬物療法、精神療法が主になります。
 そのほかに、月経、妊娠、出産に関連して精神障害が起こることがあります。うつ病やうつ状態が多いのですが、産後ではせん妄、幻覚、妄想、うつ状態、躁状態などの産褥(さんじょく)精神病のかたちをとることもあります。この場合の治療は精神科治療に準じます。

■代謝障害
 肝硬変が進行したときに起こるせん妄状態などの精神症状(肝性脳症)、尿毒症でみられるせん妄状態、ビタミン欠乏症によるせん妄、幻覚、健忘(ウェルニッケ脳症など)、糖尿病でみられやすいうつ病などがあります。
 また、人工透析を続けているうちに記憶障害や認知症、性格変化があらわれることもあります。この場合の治療は、原疾患の治療とともに薬物療法や精神療法を加味します。

■その他
 全身性エリテマトーデスでは精神症状を伴うことが多く、躁状態、うつ状態、幻覚、妄想、せん妄状態など多彩な症状がみられます。
 感染症などで高熱が出る場合、心疾患などで全身の循環がわるくなっている場合、呼吸器疾患で脳への酸素供給が低下している場合で、せん妄状態になることがあります。
 疾病ではありませんが、手術後にせん妄状態になることがあります。もともとの疾患が重症であったり、手術の侵襲が大きかったり、高齢であったりするとせん妄になる率が高くなるようです。この状態は、ほとんどが一時的なものです。
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