パーソナリティ障害〔ぱーそなりてぃしょうがい〕 家庭の医学

 人はどの2人をとっても同じ人はいないように、人には個性、個人差があります。しかし多くの人をみると、性格(人格)の個人差はある程度の幅のなかに入っています。
 ところが、非常に多くの人について見ると、平均的なところから大きくずれている人が必ずいます。そのような性格のなかには、社会生活や対人関係でマイナスに作用するものがあり、その結果本人が自分の性格を悩んだり、周囲が悩まされたりします。これがパーソナリティ障害(人格障害)にあたるもので、性格障害、性格異常、精神病質などいろいろな名称が用いられています。
 このような障害は、通常青年期ころに始まり、成人になって明瞭になってきます。

[種類]
 数多くのパーソナリティ障害の分類がありますが、ここではおもなものを国際分類に準じてあげておきます。

■妄想性パーソナリティ障害
 現実にないことをあたかも起こったことのように考え、他人から指摘されても考えを変えないのが妄想です。このような場合、その考えにもとづく言動があり、周囲との摩擦が生じることが多いのです。妄想は統合失調症などの精神疾患によくみられますが、そのような疾患がなく性格に根ざす場合がこのパーソナリティ障害にあたります。
 疑り深い、被害的になりやすい、嫉妬しやすい、恨みを抱き続ける、他人から拒まれることに非常に敏感である、自尊心が強く自分の話ばかりする、自分の権利を執拗に主張するなどの特徴があります。

■統合失調質パーソナリティ障害
 他人との親しい人間関係を望まず、空想や内省に没頭して社会的に孤立しています。感情の表現が乏しく、また周囲からの批判や賞賛などにも関心をはらいません。超然としていたり、社会的な規範や習慣にいちじるしく鈍感であったりします。

■非社会性パーソナリティ障害
 別に反社会性パーソナリティ障害ともいわれます。欲求不満におちいりやすく、たやすく暴力的になる傾向があります。責任感が乏しく、罪悪感を感じる能力がなく外罰的です。社会と衝突した場合は自己弁護の傾向が強いことも特徴的です。

■情緒不安定性パーソナリティ障害
 結果を考えず行動する傾向(衝動性)、それをとめようとした相手と衝突する傾向、突発的な怒りや暴力、常に賞賛を要求する傾向、不安定で気まぐれな気分などを特徴とするのがこのパーソナリティ障害の衝動型です。以上の特徴に加えて、混乱した自己像、対人関係のいちじるしい不安定性、自暴自棄になりやすい傾向、自傷行為、慢性的空虚感などがみられるのが境界型です。後者は境界型パーソナリティ障害とも呼ばれます。

■演技性パーソナリティ障害
 感情の表現がオーバーで芝居がかっていたり、注目の的になるような行動をしたり、周囲の言動に影響されやすかったり、身体的魅力に過度にこだわったりといった特徴があります。

■強迫性パーソナリティ障害
 几帳面、完全癖、頑固、徹底性などとともに、疑いや警戒の感情が強く、細部やものの順序に極度にこだわり、自己流のやりかたに他人も巻き込むといった特徴があります。

■不安定性(回避性)パーソナリティ障害
 自分に自信がなく、人からどう思われるかを過度に気にして緊張が強く、批判や非難をおそれて生活範囲をかなり制限するといった特徴があります。

■依存性パーソナリティ障害
 意思決定ができず、依存している人のいいなりになり、1人で過ごすことができず、自立を求められると見捨てられたと思い込んでしまうといった特徴があります。

[治療]
 パーソナリティ障害のなかには、神経症性障害やうつ病のような症状を出す場合があります。そのような場合は、自ら治療を求めることも多く、精神療法や薬物療法が用いられます。また境界型パーソナリティ障害では、薬物療法や認知行動療法(認知療法)などが用いられています。
 しかし、以上のような治療を受けることなく、自ら治療を求めず周囲が困っているといったケースもかなり多いと思われます。

(執筆・監修:高知大学 名誉教授/社会医療法人北斗会 さわ病院 精神科 井上 新平)
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