ビタミン欠乏症〔びたみんけつぼうしょう〕

 ビタミン欠乏症は、発育期や授乳などで、ビタミンの消費が多いのに、食事からの摂取量が不足のときに起こります。また摂取したビタミンの体内への吸収や利用がわるいとき、たとえば消化管の手術などで吸収障害があるときにも起こります。

■ビタミンA欠乏症(夜盲症)
 ビタミンAは、からだの正常な発育、皮膚や粘膜などの成長と保護、視覚作用に重要なはたらきをしています。
 欠乏症状は乳幼児の発育の遅れ、皮膚がかさかさにあれる、暗くなるとものが見えなくなる夜盲(やもう)症(とり目)などです。夜盲症は進行すると結膜や角膜の表面が乾燥して白く濁り、ついには失明することがあります。
 1日の必要量は1800~2000IUです。

■ビタミンB1欠乏症(脚気)
 ビタミンB1は、肝臓、心臓、筋肉などにひろく分布して、糖質の代謝や神経系のはたらきを円滑にする作用をもつビタミンです。
 B1欠乏症は脚気(かっけ)といわれて古くからよく知られた病気です。からだがだるい、手足のしびれ、下肢のむくみや知覚低下などの症状が出ます。ひどくなると足を動かす力がなくなり歩行も困難となります。診察で膝蓋腱(しつがいけん)反射(ひざをハンマーでたたくと足がはね上がる現象)が出なくなるのが特徴です。心筋がおかされると動悸(どうき)や息切れで、心不全も起こします。
 ビタミンB1の1日必要量は1mgです。軽症のB1欠乏には1日5~10mg、重症では10~50mgを内服します。

■ビタミンB2欠乏症
 ビタミンB2は、生体の酸化・還元に関与する酵素の補酵素としてはたらきます。B2単独欠乏はまれです。症状は口角炎や舌炎、結膜炎などです。
 所要量は1日1.5mgです。欠乏症では1日5~10mgを内服します。同時にビタミンB1やB6、ニコチン酸なども投与するといっそう効果的です。

■ビタミンB6欠乏症
 ビタミンB6は、種々のアミノ酸代謝に関与する酵素のはたらきを助ける作用をもっています。欠乏症は主として消耗性疾患や妊婦、授乳婦にみられます。皮膚症状として末梢神経炎、貧血もみられます。
 1日の必要量は2~3mgです。欠乏時には10~100mg内服が必要です。

■ビタミンB12欠乏症(悪性貧血)
 ビタミンB12は、酸素とともに核酸代謝に重要なはたらきをしています。特徴的な症状は悪性貧血ですが、胃切除後に起こしやすくなります。また、末梢神経炎や脊髄(せきずい)の障害を起こして歩行困難になる場合もあります。
 成人の1日必要量は3μgです。欠乏時には1日1500μgを3回に分けて内服します。

■ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)
 ニコチン酸はB1、B2とともに糖代謝に関与します。ニコチン酸欠乏症ではペラグラという病気になります。とうもろこしを主食とする地方でみられる病気です。
 症状は、手足、くび、顔などに皮膚炎を起こし、舌炎、口内炎、腸炎のため食欲不振となり、下痢を併発します。また頭痛、めまい、錯乱状態などの神経症状を起こすこともあります。
 成人の1日必要量は15~20mg、治療量は1日25~200mgです。

■ビタミンC欠乏症(壊血病)
 ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれていますが、天然には果物、野菜、緑茶などに豊富に含まれている、よく知られたビタミンです。
 ビタミンCは血管壁を強くしたり、血液の凝固を助けたりする作用がありますので、これが欠乏すると皮膚に点状の出血を起こしたり、鼻血や歯ぐきの出血を起こしたりします。これを壊血(かいけつ)病と呼んでいます。
 ビタミンCの1日の必要量は50mgです。欠乏時には1日100mgを内服します。新鮮な野菜や果物を十分にとれば、通常は欠乏症を起こす心配はありません。

■ビタミンD欠乏症(くる病)
 ビタミンDは肝臓や腎臓を経て活性型のビタミンDとなり、腸管からのカルシウムやリンの吸収を助けるはたらきをします。
 ビタミンDが欠乏すると骨の発育やカルシウムの沈着が障害されて、発育期の乳幼児はくる病を起こします。また、成人では骨軟化症を起こし、特に高齢者ではカルシウムがしだいに消失して骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を起こしやすくなります。
 乳幼児のくる病では不機嫌、食欲不振などの症状のほか、泉門(頭蓋骨の合わせ目で、通常は生後18カ月で閉鎖する)の閉鎖が遅れます。また、肋骨(ろっこつ)と肋軟骨の移行部が数珠(じゅず)状にふくらんで、背骨が曲がったりX脚やO脚になったりします。成人の骨軟化症では骨折しやすく、歩行障害や疲労感もみられます。
 ビタミンDの1日所要量は100IUです。くる病には牛乳とビタミンD 1日2000~3000IUを内服し、骨軟化症にはカルシウム剤とビタミンD 1日5万IUを服用します。骨粗鬆症には、ビタミンB3(アルファカルシドール)がよく使われます。なお、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDに変化しますので、よく日光にあたることも欠乏症の予防として大切です。

■ビタミンK欠乏症
 ビタミンKは抗出血因子として、血液凝固に必要なビタミンです。欠乏症では出血傾向が起こり、血中のプロトロンビン値が低くなります。肝臓病や腸の手術後の吸収不全のときなどに起こりやすくなります。
 ビタミンKは1日10~30mg内服が必要です。
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