食道粘膜下腫瘍〔しょくどうねんまくかしゅよう〕 家庭の医学

 食道がんは食道の粘膜から発生しますが、食道の壁の中から発生して粘膜を押し上げるように発育する腫瘍を総称して食道粘膜下腫瘍といいます。おもなものに食道平滑筋腫(しょくどうへいかつきんしゅ)と食道GIST(じすと:消化管間質腫瘍)があります。
 食道粘膜下腫瘍は、表面に露出していないので内視鏡で生検することがむずかしいですが、針を深く刺して細胞をとるFNB(Fine Needle Biopsy)で腫瘍の一部を生検することがあります。2cm以上のものは悪性の可能性があり、手術の対象になります。どのような腫瘍かは切除してみないと診断がつかないことがしばしばです。

■食道平滑筋腫
 食道壁には粘膜筋板と固有筋層の2層の筋肉層があり、この筋肉層から出た良性腫瘍が平滑筋腫です。通常、症状はありませんが、5~6cmと大きくなるとつかえ感が出てくることがあります。大きくなるものは悪性の平滑筋肉腫である可能性がありますので、定期的に検査を受けるようにしましょう。
 大きくなる傾向にあるものは、手術で腫瘍をくりぬいて取り除きます。また、粘膜筋板から発生した小さなものはポリープをとるのと同じように、内視鏡的に内腔側から切除することも可能です。
 固有筋層から発生したものや食道の壁外に向かって大きくなったものは、胸腔(きょうくう)鏡下に筋腫をくりぬいて切除します。10cm程度の大きなものでは食道を切除します。


■食道GIST(Gastro-Intestinal Stromal Tumor)
 食道壁の筋肉の運動をつかさどる神経叢(そう)にあるカハールの介在細胞から発生する腫瘍で、胃や大腸にもできます。転移を起こす悪性のものと起こさない良性的なものがあります。転移は肝転移や播種(はしゅ)のかたちで起こります。
 転移のないものは手術で切除しますが、転移がある、または転移の可能性がある場合はイマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブという分子標的薬を使います。


■食道顆粒細胞腫
 全身のいろいろなところに発生し、皮膚や口腔(こうくう)内、乳腺などに多くみられます。消化管では食道にみられますが、比較的まれです。自覚症状はなく、たまたま見つかることがほとんどです。神経周囲の細胞から発生するといわれており、小型の核をもち、細胞質が顆粒状、類円形の腫瘍細胞が密集しています。大部分は良性です。
 2cm以下のものでは内視鏡的に食道内腔からくり抜いて切除できます。


■食道血管腫
 粘膜下の血管が海綿状に増生したもので、良性腫瘍です。皮膚や肝臓によくみられます。
 出血の可能性もありますので、切除します。

(執筆・監修:順天堂大学 名誉教授〔食道胃外科〕 鶴丸 昌彦)
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