心臓神経症〔しんぞうしんけいしょう〕 家庭の医学

 心臓神経症というのは、心臓にはっきりした病気がないのに、心臓に関連したいろいろな症状を起こす病気をいいます。青年や中年の男女に比較的多い病気です。
 動悸(どうき)がし、呼吸困難や胸痛があります。狭心症と違って、症状が長時間続いて何回もくり返し起こります。動悸は、ほんとうの心臓の病気では一定の運動で起こりますが、この場合は安静にしているときにも起こります。特に夜に起こり、不安になり寝られないことがあります。心臓部の痛みをうったえ、狭心症とまちがえられます。そのほか、いつも疲れた感じがあり、いくら安静にしても治らず、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠などを伴うことが多いです。患者はため息をつくことが多く、元気がなく、いらいらする傾向があります。

 この病気が起こるのは、体質や遺伝からくる要素のうえに、拒食症や精神的ストレス、なにか心配ごととか過労などが加わって起こることが多いです。また、たばこやコーヒーの飲みすぎのこともあり、からだのどこかに、ちょっとした病巣(たとえば、僧帽弁逸脱症など)が隠れていることもあります。高血圧の初期の症状として起こることもあります。

 治療は、信頼する医師に、納得のいくまで検査してもらって、心臓神経症と診断されたら、その医師の指示に従い、あるいは心療内科の専門医に相談して、症状の起こりやすい背景や誘因を考え、あるいは深呼吸などで軽快するきっかけを考えてみることです。医師はおもに精神療法をおこないます。検査を十分にしないで安易に心臓神経症といわれている人のなかには、不整脈の病気の人が案外多いようです。胸痛や動悸、息切れの起こっている最中に心電図を記録(ホルター心電図)してもらい、自覚症状のあるときでも心電図が正常であることを確認してもらうことです。

(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 常勤顧問 梅村 純)
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