神経調節性失神(NMS)〔しんけいちょうせつせいしっしん(NMS)〕 家庭の医学

 自律神経の過緊張のため、いちじるしい徐脈(脈がおそくなる)や血圧低下が起こり、一時的に脳に行く血流が低下して起こる失神を神経調節性失神(NMS:neurally mediated syncope)といいます。
 徐脈が主体の心抑制型、血圧低下が主体の血管抑制型、両方の要素がみとめられる混合型に分類されます。発作直前に前ぶれとなる症状があらわれることが多く、長時間の立位姿勢、痛み刺激、精神的・肉体的ストレスや環境要因が誘因となります。特に午前中に多く発生し、失神の持続時間は短く(1分以内)、転倒による外傷以外には後遺症を残さず、生命予後(生命が維持できるかどうかの予測)は良好です。
 診断は、ホルター心電図やティルト試験といわれる起立負荷により判定します。
 治療としては、起立訓練法や薬物療法(α〈アルファ〉刺激薬、β〈ベータ〉遮断薬、リスモダン)が主体ですが、効果の少ない場合にはペースメーカーの植え込みがおこなわれることもあります。

(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 常勤顧問 梅村 純)
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