市中感染症と院内感染症 家庭の医学

 市中感染症とは、社会生活をしている健康人に起こる感染症で、多くは外因性感染症を指します。
 院内感染症は2つに分けられます。一つは、赤痢腸チフス新型コロナウイルス感染症のような外因性の急性感染症患者を収容した医療関連施設で、医療関係者や感染症以外の病気で入院・入所している患者・入所者に感染する場合です。もう一つは、なんらかの基礎疾患で入院している患者に発症する日和見(ひよりみ)感染症です。
 この日和見感染症が院内感染症の代表的なものです。院内感染の原因としては、治療法や補助療法の進歩によって、以前なら基礎疾患で致命的となっていた患者さんが延命できるようになった結果、免疫不全患者がふえて日和見感染症の増加につながったと考えられます。
 このようにして生じた日和見感染症の病原体が院内で伝播されてひろがり、さらに院内感染症がふえる事例も知られています。近年問題となっている、多剤耐性菌による感染症も、院内感染症として重要です。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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