内科的な持病のある人の妊娠 家庭の医学

 妊娠前から持病のある人は、主治医とまず相談しましょう。薬をのんでいる人は、胎児へ影響の少ないものに変更するなど、計画的に妊娠することが必要かもしれません。

■心臓病
 一般的には、日常生活に支障ない程度であれば妊娠は大丈夫ですが、妊娠中は心臓にいちばん負担がかかります。ふだんから動悸(どうき)、息切れがある人の場合は安全とはいえないでしょう。よくかかりつけ医と相談し、家族の意見も大切にしましょう。特に授乳や育児は妊娠出産以上に負担となることがあり、その場合、夫や家族の協力がないとむずかしいからです。
 妊娠中は塩分を制限し、体重はふえすぎないように、また休養は十分とりましょう。妊娠8カ月(30週前後)がもっとも心臓への負担が大きいので、入院が必要になることもあります。
 出産時のいきみによる心臓への負担を軽くするために、吸引や鉗子(かんし)を使って分娩(ぶんべん)を早く終わらせることもあるのです。
 産後は十分休息をとり、周囲の人の協力を得ながら徐々に授乳や育児に慣れていくようにします。

■腎臓病
 いろいろな病気があるので、主治医に相談するのがいちばんです。慢性腎炎などでたんぱく尿が出ているような人は、妊娠によって腎臓に負担がかかり、悪化しやすいです。妊娠高血圧症候群になりやすいため、胎児に影響が出て早産や未熟児になることもあります。
 妊娠中は食事や休養に注意し、医師からのアドバイスに従ってください。妊娠中に腎臓に大きな負担がかかると、産後にもとに戻らない場合もありうるでしょう。

■糖尿病
 糖尿病のある人でも血糖コントロールがよくできていれば、妊娠は十分可能です。しかし、網膜症腎症などの合併症が進んでいる場合は、むずかしいことがあります。また、血糖コントロールが不良のときに妊娠が成立すると、胎児の異常が多いこともわかっていますので、妊娠前からの計画が必要です。主治医とよく相談しましょう。
 妊娠中はインスリンを使うのがふつうですが、妊娠経過とともに量が変わりますし、また食事管理がたいへん重要です。治療していても、妊娠高血圧症候群を起こしやすく、胎児の発育は厳重にチェックしていく必要があります。分娩(ぶんべん)の前に、胎盤のはたらきがわるくなることがあり、予定日より早く分娩するようにしたり、帝王切開となる場合があるかもしれません。

■甲状腺機能亢進症
 若い女性に多い病気ですが、薬によって機能が正常であれば問題はありません。薬も胎児に影響のないものが多いので、自己判断でかってにやめることのないようにします。やめるとかえって母体が発作を起こして、胎児を危険にさらしてしまうからです。
 妊娠を予定している人は主治医に確認してみましょう。

■ぜんそく
 現在、ぜんそくの治療は発作の予防のために副腎皮質ステロイド薬吸入をおこなうのがふつうです。吸入薬は局所(気管支粘膜)の作用が主体ですので、心配はほとんどありません。むしろ発作が何回も起こって母体が低酸素になると、胎児も酸欠状態になり、発育に影響する可能性があります。また気管支拡張薬など、発作時に使う薬もまず心配がありません。
 妊娠中は休養を十分にとる、かぜをひかないようにする、からだを冷やしすぎないようにするなどの注意をしましょう。産科と呼吸器科の両方にかかることになるので、できれば同じ病院を選ぶことが望ましいのですが、主治医とよく相談してください。

■てんかん
 薬によって発作が抑えられているようなら、まず心配はありません。薬も問題のないものが多いのですが、妊娠を希望するときは、主治医と相談しましょう。

【参照】
 腎臓・尿路・男性性器の病気:女性と腎臓病
 内分泌・代謝異常の病気:甲状腺機能亢進症
 脳の病気:てんかん

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)
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