糖尿病(性)腎症〔とうにょうびょう(せい)じんしょう〕

 高血糖の持続によって、腎臓の重要な濾過(ろか)機能を担っている糸球体が障害され、たんぱく尿が出現し、やがて腎機能が徐々に低下して、血清クレアチニンの上昇、さらに腎不全へと進行する病気です。糖尿病(性)腎症の病期は、尿たんぱくの程度や糸球体の濾過機能の低下の程度により、2013年の腎症合同委員会報告により、表のように腎症病期分類が改訂されました。

●糖尿病性腎症病期分類注1)
病 期尿アルブミン値(mg/gCr)
あるいは
尿たんぱく値(g/gCr)
GFR(eGFR)
(mL/分/1.73m2
第1期
(腎症前期)
正常アルブミン尿(30未満)30以上注2)
第2期
(早期腎症期)
微量アルブミン尿(30~299)注3)30以上
第3期
(顕性腎症期)
顕性アルブミン尿(300以上)
あるいは
持続性たんぱく尿(0.5以上)
30以上注4)
第4期
(腎不全期)
問わない注5)30未満
第5期
(透析療法期)
透析療法中
注1)糖尿病性腎症は必ずしも第1期から順次第5期まで進行するものではない。本分類は、厚労省研究班の成績に基づき予後(腎、心血管、総死亡)を勘案した分類である(Clin Exp Nephrol 18:613-620,2014)。
注2)GFR 60mL/分/1.73m2未満の症例はCKDに該当し、糖尿病性腎症以外の原因が存在し得るため、他の腎臓病との鑑別診断が必要である。
注3)微量アルブミン尿を認めた症例では、糖尿病性腎症早期診断基準に従って鑑別診断を行った上で、早期腎症と診断する。
注4)顕性アルブミン尿の症例では、GFR 60mL/分/1.73m2未満からGFRの低下に伴い腎イベント(eGFRの半減、透析導入)が増加するため、注意が必要である。
注5)GFR 30mL/分/1.73m2未満の症例は、尿アルブミン値あるいは尿たんぱく値にかかわらず、腎不全期に分類される。しかし、特に正常アルブミン尿・微量アルブミン尿の場合は、糖尿病性腎症以外の腎臓病との鑑別診断が必要である。

【重要な注意事項】本表は糖尿病性腎症の病期分類であり、薬剤使用の目安を示した表ではない。糖尿病治療薬を含む薬剤、特に腎排泄性薬剤の使用にあたっては、GFR等を勘案し、各薬剤の添付文書に従った使用が必要である。

糖尿病性腎症合同委員会:糖尿病性腎症病期分類2014の策定(糖尿病性腎症病期分類改訂)について. 糖尿病57:529-534,2014より一部改変

(日本糖尿病学会 編・著 : 糖尿病治療ガイド2020-2021,p84,文光堂,2020)


 糖尿病(性)腎症も早期発見・早期治療が重要であり、早期発見には尿中アルブミンの検査(微量アルブミン尿の検出)が役立ちます。GFRとは、糸球体濾過量のことで、血清クレアチニンと年齢から計算式で算出されるeGFRで代用されます。
 腎症の予防と治療には、血糖コントロールのみならず、血圧のコントロールが重要です。顕性腎症期になると、血糖コントロールとともに降圧治療、たんぱく制限食が必要です。慢性腎不全の状態になれば、やがて人工透析が必要となります。
 治療、食事、生活のポイントは、第1期は、糖尿病食を基本とし、血糖コントロール、降圧治療、脂質管理、禁煙です。第2期も第1期のポイントに加え、たんぱく質の過剰摂取を控えます。第3期は、血糖コントロール、降圧治療、脂質管理、禁煙、たんぱく質制限食、第4期になると、第3期のポイントに加え、貧血の治療が加わります。
 新規に透析に導入される腎疾患の第1位は腎炎でしたが、1998年には、はじめて糖尿病(性)腎症が第1位となりました。


【参照】腎臓・泌尿器・男性性器の病気:糖尿病腎症

(執筆・監修:東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長/東京女子医科大学 特任教授 内潟 安子)
医師を探す