呼吸器の病気 家庭の医学

■感冒・急性上気道炎
・かぜのひきはじめに、寒けがして熱があり、のどや頭が痛み、背筋から後頭部がこっているときには葛根湯(かっこんとう:陽・実)を用います。この際、しっとりと汗が出ている場合には桂枝湯(けいしとう:陽・虚)を用います。ひきはじめに早めに服用して、熱めの飲み物やお粥(かゆ)を食し、あたたかくして寝ているとよく効きます。
・鼻かぜで、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりがあれば小青竜湯(しょうせいりゅうとう:陽・虚・水毒〈すいどく〉)を用います。高い発熱や頭痛には効果はありません。
・かぜのひきはじめで、自然に汗ばんでいる場合には桂枝湯(けいしとう:陽・虚)を用います。胃腸虚弱で葛根湯(かっこんとう)や小青竜湯(しょうせいりゅうとう)をのむと胃がわるくなる人にも応用できます。
・かぜのひきはじめに鼻みず、のどの痛み、頭痛などがあって、さむけが強いときには麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう:陰・虚)を用います。陰の病態のかぜ薬です。冷え症で虚弱な人や高齢者向きの方剤(生薬を組み合わせて処方したもの)です。
・虚弱体質で、ほかのどの感冒薬でも胃腸障害を起こしやすいという人には香蘇散(こうそさん:陽・虚・気鬱〈きうつ〉)を用います。高齢者には特によい薬です。
・冷え症で体質虚弱な人の胃腸型感冒で、水のような下痢の場合には真武湯(しんぶとう:陰・虚・水毒)を用います。この場合の下痢では腹痛はなく、からだがだるいことが多いのです。
・感冒がこじれてきて、鼻みず、鼻づまり、咽頭痛、せき、たん、微熱、寝汗があって、胃腸の調子がわるい場合には柴胡桂枝湯(さいこけいしとう:陽・虚)を用います。
・かぜの治りぎわに長びき、微熱と寝汗があり、疲れやすく元気がない人には補中益気湯(ほちゅうえっきとう:陽・虚・気虚〈ききょ〉)を用います。

■気管支ぜんそく
・くしゃみ、鼻みずが多くて、薄いたんがたくさん出るタイプのぜんそくには小青竜湯(しょうせいりゅうとう:陽・虚・水毒〈すいどく〉)を用います。アレルギー性鼻炎にも有効です。
・ぜんそく発作のときに、切れにくいたんがからんでせき込み、気管からゼーゼー、ヒューヒューと音がするときには麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう:陽・実)を用います。乳幼児のぜんそくとぜんそく性気管支炎によく効きます。
・ぜんそくの体質を改善する漢方方剤として柴朴湯(さいぼくとう:陽・虚実中間・気鬱〈きうつ〉)があります。発作のないときに気長にのんでいると、体質改善できることが多いのです。副腎皮質ステロイド薬の減量にも有効です。

■「かぜひき体質」の改善
・扁桃腺肥大があって慢性炎症のある人には小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう:陽・実)を用います。抗菌薬と併用してよいことがあります。
・扁桃腺がはれて、かぜをひきやすいだけでなく、緊張すると胃が痛んだりおなかが痛んだりしやすい人には柴胡桂枝湯(さいこけいしとう:陽・虚)を用います。
・かぜをひきやすく、疲れやすい人には補中益気湯(ほちゅうえっきとう:陽・虚・気虚〈ききょ〉)を用います。虚弱児の体質改善にも応用できます。
・貧血ぎみで、肌の色つやがわるく、疲れやすく、かぜをひきやすい人には十全大補湯(じゅうぜんたいほとう:気虚・血虚〈けっきょ〉)を用います。

(執筆・監修:医療法人社団誠馨会 千葉中央メディカルセンター和漢診療科 顧問 寺澤 捷年
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