救命・応急手当ての流れと注意点

 傷病者にいかに早く救急蘇生法をおこなうかで、その傷病者の回復が大きく左右されます。救急隊が到着するまでに、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)がおこなう「救命・応急手当て」の大まかな流れと注意点は、次のとおりです。
 まず大切なのはあわてないこと、そして必ず助けを呼ぶことです。1人で頑張っても長く続かないので、人手が必要です。そして、自分しかいない状況では、優先すべきは119番通報をし、AED(automated external defibrillator:自動体外式除細動器)が近くにある場合、それをとってくることです。
 また、自分自身の安全確保も重要です。助けに行ったはずが、逆に傷病者をふやす(自分自身が助けられる側になってしまう)ことは避けましょう。
 心肺蘇生で口対口の人工呼吸をおこなうケースで、バイスタンダーが肝炎やエイズなどの感染症に感染する可能性は低いと想定されますが、感染のリスクを低減する防護具として、一方向弁付き呼気吹き込み用具やキーホルダー型のフェイスシールドなどが市販されています。ただし、2020年からの新型コロナウイルス感染症流行下では、エアロゾルの発生するこれら人工呼吸は一般市民に推奨されません。
 とっさのことで、こうした用具もなく、人工呼吸をちゅうちょするときは、胸骨圧迫だけでいいので実施しましょう(参照:心肺蘇生のしかた)。過去の例から、胸骨圧迫の有効性、傷病者の救命率向上が認められています。

(執筆・監修:医療法人財団健和会 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問 箕輪 良行)