心肺蘇生のしかた 家庭の医学

■胸骨圧迫
 胸骨圧迫は、まず傷病者の前胸部、両側の乳房(乳首)を結んだ線が真ん中で交わるところに、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)の手のひらを重ねておきます。バイスタンダーの両腕を真っすぐに伸ばして、垂直になるように上体を傷病者の上におおいかぶります。傷病者の胸骨の下半分が深さ5~6センチ沈むように、1分間に100~120回のペースで圧迫します。人工呼吸を開始できるようになるまで、可能な限り胸骨圧迫を継続します。

■胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を交互に
 心肺蘇生は、連続30回の胸骨圧迫と人工呼吸2回を組み合わせて、これを絶え間なく継続しておこないます。ただし、胸骨圧迫の30回連続は目標値で、あくまでも目安です。
 胸骨圧迫は思いのほか体力を使い、消耗します。疲労してくると力が弱くなり、テンポも遅くなります。なので意識的に強く、速く、圧迫を続けます。協力してくれる救助者がいるときは、2分を目安に胸骨圧迫と人工呼吸を交代しましょう。乳児・幼児の心肺蘇生は別項「乳児―小児の心肺蘇生法」を参照ください。

■心肺蘇生をいつまで続けるか
 心肺蘇生中に、傷病者が声をだす、動く、通常のように呼吸を始めたら、心肺蘇生を中止します。傷病者のようすを見守りながら、救急隊を待ちます。必要であれば、気道確保や回復体位をとらせるなどします。もし再び呼吸をしなくなったら、心肺蘇生を再度試みます。
 また、心肺蘇生中に救急隊が到着したからといって、即座に心肺蘇生を中止にせず、救急隊員の指示に従いながら、救命活動の引き継ぎをしてください。
 心肺蘇生では、けっしてあきらめないことが肝心です。通常、心臓が止まったまま4分以上経過すると脳が死にはじめます。救急車が到着するのは全国平均で約8.5分です。目の前で倒れた人を、何もせずにそのまま見ているだけでは、救命の連鎖は途切れてしまいます。勇気をもって手をさしのべ、救急隊に救命の連鎖を引き継ぐことが大切です。

(執筆・監修:医療法人財団健和会 みさと健和病院 救急総合診療研修顧問 箕輪 良行)

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