伝染(感染)性単核球症〔でんせん(かんせん)せいたんかくきゅうしょう〕

 これはEBウイルス(エプシュタイン・バーウイルス)による感染症です。EBウイルスは感染後約2年間、口腔(こうくう)・咽頭のリンパ組織から分泌され、唾液を介して接触感染します。
 また、20%程度の人は、その後も断続的にウイルスを分泌します。多くは幼児期に不顕性感染(感染したにもかかわらず感染症状が出てこない状態)を受けていますが、その後の初感染としては15~20歳に多く、キスなどによって感染することから、「キス病」(kissing disease)との別名もあります。
 2週~2カ月の潜伏期後、食欲不振、悪心、嘔吐(おうと)などの前駆症状があります。
 発熱(39~40℃)、咽頭炎(しばしば白苔〈はくたい:黄白色のビロード状の付着物〉を伴う)、扁桃(へんとう)炎、頸部(けいぶ)リンパ節炎などの炎症症状を呈します。
 EBウイルスはBリンパ球に感染しますが、これにTリンパ球が反応し、異型リンパ球としてみとめられるのが特徴の一つです。ほとんどの症例で肝機能に障害がみられます。
 また臓器移植後、免疫抑制薬の投与を受けている人やHIV感染症の人で、はEBウイルスを分泌している割合が増加し、このような免疫抑制の強い人ではEBウイルスによって悪性リンパ腫が発生することもあります。

【参照】子どもの病気:伝染性単核球症

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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