パスツレラ感染症〔ぱすつれらかんせんしょう〕 家庭の医学

 パスツレラ科の病原性細菌はグラム陰性の小さな短桿菌(たんかんきん)で、パスツレラ属、ヘモフィルス属、アクチノバチルス属に分類されます。
 パスツレラ属の菌による感染は、イヌやネコとの接触やかまれて感染することが多く、動物との関連がはっきりしない場合も少なくありません。病型としては、かまれた局所の皮膚感染病変にとどまるもの、菌血症や敗血症を起こすもの、慢性呼吸器感染症を呈するものなどが知られています。動物にかまれたら、その部分を洗い、消毒することが大切です。
 ヘモフィルス属ではインフルエンザ菌による肺炎が有名です。肺炎や慢性呼吸器感染症の原因菌となります。また、髄膜炎を起こすことがあります。パラインフルエンザ菌は比較的病原性が弱く、肺炎を起こすことはほとんどありません。性感染症の一つである軟性下疳(げかん)はヘモフィルス・デュクレイによるもので、局所の潰瘍と鼠径(そけい)リンパ節腫脹が特徴で、日本ではまれです。
 アクチノバチルス属は口腔(こうくう)内に常在する嫌気性菌で、歯周炎の原因となります。抜歯など歯科処置の際に傷口より侵入し、菌血症や心内膜炎を起こすことがあります。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
医師を探す