伝染(感染)性下痢症〔でんせん(かんせん)せいげりしょう〕 家庭の医学

 下痢はいろいろな原因で起こりますが、そのなかで細菌やウイルス、原虫、寄生虫など病原微生物の感染による下痢を伝染性下痢症または感染性下痢症と呼びます(参照:感染性胃腸炎)。
 小児の下痢の原因でもっとも多いのはロタウイルスによるもの(ロタウイルス感染症)で、冬季によく流行し、嘔吐(おうと)と発熱に続いて、白色からクリーム色の下痢便が特徴です。
 ウイルスでは、このほかにノロウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルスなどでも下痢がみられます。
 ウイルスによるものは特別な治療薬がないので対症療法が主体になりますが、水分補給が適切におこなわれれば重篤になることはあまりありません。
 成人では病原性大腸菌によるものが多く、腸管出血性大腸菌、毒素原性大腸菌の感染症(腸管出血性大腸菌感染症)がその代表です。このほかニワトリやウシ、ブタなどの食肉に付くサルモネラ(非チフス性。サルモネラ食中毒)、おもに鶏肉が感染源となるカンピロバクター(カンピロバクター食中毒)、魚介類が感染源となる腸炎ビブリオ(腸炎ビブリオ食中毒)などが原因として多くみとめられ、四大原因菌といわれています。
 これらによる急性胃腸炎は食中毒と呼ばれていますが、細菌性赤痢コレラ腸チフスなどは症状が重いのが特徴です。
 原虫では赤痢アメーバ、ランブリア、クリプトスポリジウムなどが原因となります(アメーバ赤痢ジアルジア症クリプトスポリジウム症)。寄生虫では回虫、糞線虫、十二指腸虫で下痢となることがあります。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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