低用量経口避妊薬(低用量OC)
現在のところ、もっとも効果が確実な避妊法の一つです。しかし、避妊をしている日本の既婚女性で低用量OCを服用している人は、2016年の調査では4.2%と低く、1999年に日本で本剤が承認されて20年以上たちますが、普及は進んでいません。
この理由として、日本ではホルモン治療をネガティブに考える人がいまだ多いこと、副作用や合併症が心配であること、医療機関を受診して処方される煩わしさ、価格が安価でないことなどがあげられます。最近では、頻度はきわめて低いものの、OCによる血栓症発症の報告がみられ、特に、副作用への不安が強いことも指摘されています。
しかし、問診などによってOC使用に対する不適切な対象をあらかじめ除外すれば、OCによる血栓症発症はきわめて低いと考えられます。また、妊娠・出産による血栓症のほうが数倍高い発症率であることから、OC使用は予期せぬ妊娠を防ぐことにより、血栓症発症リスクを下げるといえます。
さらに、人工妊娠中絶手術の経費に比較すればはるかに安価であること、低用量OCによる避妊の確実性・有効性は高く、月経困難症や過多月経の軽減、月経周期の安定、子宮内膜症の進行抑制や治療、アクネ(にきび)の改善、卵巣がん、子宮体がんをはじめとする女性のがん発生を抑制する副効用もあり、特に高血圧や代謝疾患の頻度の低い若い女性に対して、すすめられる避妊法です。
OCは1錠中に、女性の卵巣から分泌される2種類のホルモン、卵胞ホルモンと黄体(おうたい)ホルモンと同じ成分(化学合成されたもの)を含有するホルモン剤です。間脳・下垂体から出る卵巣に対する排卵の指令をとめ、同時に自分の卵巣から分泌される卵胞ホルモンと黄体ホルモンの産生を抑えて、妊娠を防ぎます。すなわち、排卵をとめるばかりでなく、頸管(けいかん)から出る粘液の性状を変えて精子が子宮内に入るのをさまたげ、子宮内膜を増殖(厚く)する卵胞ホルモンの作用を抑えて受精卵の着床を阻害します。
OCの入手方法ですが、薬局で自由に購入することはできません。医師に相談して処方してもらいます。1カ月の費用はだいたい2500~3000円ほど(処方、指導料は別)です。
OCの長所は、
1.女性が自分の意思で避妊できること
2.きちんと服用すれば、妊娠する確率は0.29%といわれる確実な避妊法であること
3.服用をやめれば、また妊娠できる状態にすみやかに戻ること
などです。のむだけなので手軽で、セックスの雰囲気を壊すことがなく時期も選びません。また、さきほど述べた避妊作用以外の副効用(メリット)があります。
いっぽう、短所としては、
1. のみ忘れがないように注意しなくてはいけないこと
2. 服用初期に短期間、嘔気(おうき)が出る可能性があること
3. 乳がんの人、あるいは35歳以上のヘビースモーカー、血管障害のある糖尿病、重症高血圧症、心臓に負担がかかる病気のある人、血栓症の素因や既往のある人、前兆を伴う片頭痛のある人、長期安静を要する状況や大きな手術前後には使えないこと
4. 性感染症の予防にはならないこと
などです。
[適する人]
若い世代(35歳未満)で将来妊娠したいが、いまは避妊したい人。セックスの機会が多い人。上記の短所3.に示した不適切な対象を除いた人。
(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子)
この理由として、日本ではホルモン治療をネガティブに考える人がいまだ多いこと、副作用や合併症が心配であること、医療機関を受診して処方される煩わしさ、価格が安価でないことなどがあげられます。最近では、頻度はきわめて低いものの、OCによる血栓症発症の報告がみられ、特に、副作用への不安が強いことも指摘されています。
しかし、問診などによってOC使用に対する不適切な対象をあらかじめ除外すれば、OCによる血栓症発症はきわめて低いと考えられます。また、妊娠・出産による血栓症のほうが数倍高い発症率であることから、OC使用は予期せぬ妊娠を防ぐことにより、血栓症発症リスクを下げるといえます。
さらに、人工妊娠中絶手術の経費に比較すればはるかに安価であること、低用量OCによる避妊の確実性・有効性は高く、月経困難症や過多月経の軽減、月経周期の安定、子宮内膜症の進行抑制や治療、アクネ(にきび)の改善、卵巣がん、子宮体がんをはじめとする女性のがん発生を抑制する副効用もあり、特に高血圧や代謝疾患の頻度の低い若い女性に対して、すすめられる避妊法です。
OCは1錠中に、女性の卵巣から分泌される2種類のホルモン、卵胞ホルモンと黄体(おうたい)ホルモンと同じ成分(化学合成されたもの)を含有するホルモン剤です。間脳・下垂体から出る卵巣に対する排卵の指令をとめ、同時に自分の卵巣から分泌される卵胞ホルモンと黄体ホルモンの産生を抑えて、妊娠を防ぎます。すなわち、排卵をとめるばかりでなく、頸管(けいかん)から出る粘液の性状を変えて精子が子宮内に入るのをさまたげ、子宮内膜を増殖(厚く)する卵胞ホルモンの作用を抑えて受精卵の着床を阻害します。
OCの入手方法ですが、薬局で自由に購入することはできません。医師に相談して処方してもらいます。1カ月の費用はだいたい2500~3000円ほど(処方、指導料は別)です。
OCの長所は、
1.女性が自分の意思で避妊できること
2.きちんと服用すれば、妊娠する確率は0.29%といわれる確実な避妊法であること
3.服用をやめれば、また妊娠できる状態にすみやかに戻ること
などです。のむだけなので手軽で、セックスの雰囲気を壊すことがなく時期も選びません。また、さきほど述べた避妊作用以外の副効用(メリット)があります。
いっぽう、短所としては、
1. のみ忘れがないように注意しなくてはいけないこと
2. 服用初期に短期間、嘔気(おうき)が出る可能性があること
3. 乳がんの人、あるいは35歳以上のヘビースモーカー、血管障害のある糖尿病、重症高血圧症、心臓に負担がかかる病気のある人、血栓症の素因や既往のある人、前兆を伴う片頭痛のある人、長期安静を要する状況や大きな手術前後には使えないこと
4. 性感染症の予防にはならないこと
などです。
[適する人]
若い世代(35歳未満)で将来妊娠したいが、いまは避妊したい人。セックスの機会が多い人。上記の短所3.に示した不適切な対象を除いた人。
(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子)