不妊手術 家庭の医学

 母体保護法によって、医師には届け出の義務があります。
 女性の手術は、卵管結紮(けっさつ)といって、卵管を糸でしっかりと結ぶか卵管の一部を切り取る方法です。腹腔鏡でおこなう場合、腹壁を2~3cm程度切開しておこなう場合、腟(ちつ)から腹腔(ふくくう)内に入っておこなう場合があります。原則的に全身麻酔でおこない、2~4日の入院を要します。また、帝王切開の際にいっしょにおこなうこともあります。
 男性の手術は精管結紮といって、女性よりも簡単にからだの負担が少なくおこなうことができます。原則的に局所麻酔で日帰りの手術でおこないます。陰嚢(いんのう)の付け根を1cmほど切開し精管を取り出し糸でしばり、一部を切り取る方法です。
 不妊手術の長所は、避妊の効果が高く、全身への副作用もないことです。ただし、麻酔や入院が必要であること、一度不妊手術をしたあとに子どもを欲しいと思っても、体外受精などの生殖補助医療をおこなわないかぎり、妊娠できるようになるのはたいへんむずかしいことです。妊娠をまったく望まない場合のみにとる方法ですので、よく考えてから決めてください。

[適する人]
 産み終え世代の人。今後妊娠の希望がない人。妊娠または分娩(ぶんべん)が母体の生命に危険を及ぼしたり、母体の健康をいちじるしく低下させるおそれのある人。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子
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