卵巣がん〔らんそうがん〕

 卵巣は10~20g程度の小さな臓器ですが、おどろくほど多種多様な腫瘍が発生します。卵巣の表面を被覆する(おおっている)上皮が腫瘍化してできる上皮性腫瘍、胎児の源である卵細胞が腫瘍化してできる胚(はい)細胞腫瘍、卵細胞の周囲にある卵巣独特の間質細胞が腫瘍化してできる性索間質性(せいさくかんしつせい)腫瘍などが主要なものです。それぞれについて良性・悪性ならびにその中間的性格のもの(境界悪性腫瘍)があり、さらに、悪性群については組織分化度も考慮されます。上皮性卵巣がんの約1割において、遺伝性のものが存在することがあきらかとなってきました。BRCA1、BRCA2という遺伝子の異常(変異)がおもな原因とされています。乳がんと卵巣がんの双方の発生リスクが高いことが特徴です。
 卵巣がんは腫瘍の種類に応じて、血液中にCA125などの多様なマーカー物質を分泌します。多くの場合、それを測定することにより、腫瘍の種類、悪性か否か、治療に対する反応の良しあし、再発の早期診断が可能になります。
 上皮性卵巣がんでは、腹腔内に病巣(播種:はしゅ)がひろがっていることが多く、その場合は手術のほかに抗がん薬治療がおこなわれます。上皮性卵巣がんは、組織型によらず、パクリタキセルとカルボプラチンの2剤を組み合わせた抗がん薬治療が標準です。
 卵巣がんでも、がんのひろがりにもとづいて、進行期が決定されます。おおまかに説明すると、がんが卵巣にとどまっているとⅠ期、子宮や直腸など骨盤内の他の臓器にひろがっているとⅡ期、骨盤を越えて病巣(播種)がひろがった場合やリンパ節転移が見つかった場合がⅢ期、肺や肝臓内などに転移(遠隔転移)が見つかった場合はⅣ期になります。

[症状]
 症状がそれほどない(たとえば少しおなかがはるとか、スカートのサイズが大きくなったなど)にもかかわらず、診断されたときには卵巣から周囲にひろがっていて、腹水もたまっていることが多く、Ⅲ期以上で見つかることが多いのが特徴です。早期診断は一般的にむずかしく、定期的な検診が有効であるという証拠はありません。
 卵巣がんのなかにも、良性病変(卵巣嚢腫〈のうしゅ〉など)から2次的にがん化するものがあります。特にによって卵巣に嚢胞ができている場合、内膜症を発生母地としてがん化することがあります。腫瘍サイズが大きく、悪性の可能性がある場合には、悪性か否かの診断確定のためにも手術が選択されることがあります。

[治療]
 上皮性卵巣がんの70~80%以上は抗がん薬によく反応しますが、特にⅢ/Ⅳ期では、それだけで完治が得られる抗がん薬はありません。手術療法により腫瘍をできるだけ取り切ることが重要となります。比較的初期で、手術療法のみで目で見えるがんをすべて取り除ける場合(おもにⅠ/Ⅱ期)では、抗がん薬と組み合わせることで治る場合も多いです。パクリタキセルとカルボプラチンのほか、ドセタキセル、イリノテカン、リポソーマル化ドキソルビシン、ゲムシタビン、シスプラチン、ネダプラチンなど多くの抗がん薬を保険適用できます。また、分子標的治療薬としては、血管新生阻害剤(がんに血流がゆきわたらないようにする)であるベバシズマブが使えるようになっています。
 最適なタイミングで、病状にあった手術療法をおこなうことと、多くの抗がん薬のなかから最適ながん化学療法を実施することが重要です。
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