帝王切開手術

 腹壁と子宮壁を切開して胎児を娩出(べんしゅつ)させる方法です。母体か胎児のどちらかに異常があるために、産道からの自然分娩(ぶんべん)が困難な場合か、急いで分娩させなければならない場合におこなわれます。次のような場合が適応となります。

 1.胎児が自然の産道を通過できないとき
 児頭が大きい、狭骨盤や骨盤の形などによる児頭骨盤不均衡、子宮筋腫や卵巣腫瘍により産道通過障害があるとき、前置胎盤(ぜんちたいばん)、低置胎盤など。
 2.胎児の異常、骨盤位や横位などの胎児の位置異常、巨大児、多胎妊娠など
 3.微弱陣痛、臍帯(さいたい)の異常、胎盤早期剥離(はくり)、破水の異常(前・早期破水)などに伴う感染、胎児機能不全(NRFS)など
 4.前回帝王切開や子宮筋腫の手術後などで子宮破裂を予防するため
などです。

 手術に伴う麻酔は、腰部脊椎麻酔か硬膜外麻酔、あるいは両者併用が一般的です。手術に要する時間は40分~1時間くらいがふつうですが、以前開腹手術をしたことのある産婦は癒着(ゆちゃく)のあることがあり、それ以上の時間がかかります。手術は、子宮下部を横に切って胎児を出す方法が多く用いられます。胎児の先進部が子宮下部にない横位、あるいはごく小さい早産児の骨盤位(1000g未満など)で特に胎児を安全に娩出する必要があるときなどは、子宮体部を縦に切る古典的帝王切開をおこなうこともあります。

■問題点
 何らかの適応があるのですから、帝王切開することをしっかりと受け止めましょう。予定帝王切開は比較的安全ですが、緊急帝王切開はそれなりのリスクはあります。予定帝王切開であっても日時や予定は立ちますが、通常のお産に比較して、一般的に出血量も多くなり、血栓症を起こす危険性も高くなります。前置胎盤などで特別に出血が多くなることが予想される場合は、自己血貯血や輸血などの準備も必要です。
 手術後は通常のお産よりも腹部の傷は痛み、多少入院は長くなります。次の妊娠までの期間は最低6カ月から1年以上あけましょう。さらに、おなかのなかに癒着を起こすことがまれにあります。次回の分娩は子宮破裂を予防するために、ふたたび帝王切開にします。
 最初に帝王切開をして、次のお産のときに違う病院にかかる場合には、前回帝王切開をおこなった先生にくわしい経過の紹介状を書いてもらうとよいでしょう。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子
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