受胎調節(避妊) 家庭の医学

解説
 日本は、予期しない/計画していない妊娠(いわゆる予期せぬ妊娠等)の頻度が諸外国にくらべて低いとはいえません。特に避妊方法の知識が十分でない10歳代と、生み終え世代である40歳代後半の女性の人工妊娠中絶の選択率が高くなっています。

●5歳階級別出生数、中絶数と中絶選択率(2021年度全国)
年齢(歳)出生数A中絶数B中絶選択率
B/(A+B)%
<20 5,5429,09362.1
20~2459,89630,88234.0
25~29210,43326,08711.0
30~34292,43923,3867.4
35~39193,17723,43510.8
40~4448,51712,01819.9
45~491,5971,25243.9
50≦212150.0
全年齢811,622126,174 13.5
厚生労働省令和3年人口動態調査と令和3年度衛生行政報告例より作成


 予期せぬ妊娠をできるかぎり避けるために、避妊についてのきちんとした知識をもって受胎調節をおこなうべきです。
 理想とする避妊法の条件としては、
 1.避妊効果が高い
 2.使用において不安がない
 3.利用が簡単で手ごろな価格
 4.副作用や害がない
 5.羞恥心なく手に入れられる
 6.長期の使用でも将来の妊娠に影響を及ぼさない
 7.男性の協力がなくても使用が可能
などがあります。

 日本家族計画協会が2016年におこなった「第8回男女の生活と意識に関する調査」によると、日本の既婚女性で避妊をしている人は全体の46.3%で、そのほとんどがコンドーム腟外射精法(性交中絶法)という不確実な避妊方法をおこなっています。
 コンドームは手軽ですが、経口避妊薬や子宮内避妊用具(IUD)にくらべて避妊効果が低いことがわかっていますので、より確実な避妊をおこなうためには低用量経口避妊薬(低用量OC)、銅付加IUD、子宮内避妊システム(IUS)などの近代的な避妊法を取り入れるべきでしょう。

●わが国における女性(16~49歳まで)の避妊方法別割合(単位:%)
1996年2000年2016年**
 避妊実行率56.655.946.3
避妊法
 オギノ式定期禁欲法8.16.57.3
 基礎体温法8.99.81.9
 腟外射精法(性交中絶法)9.626.619.5
 コンドーム77.275.382.0
 腟内洗浄法0.50.40.4
 避妊薬(錠剤、ゼリー、フィルム)0.50.5
 子宮内避妊用具(IUD)3.82.70.4
 経口避妊薬1.31.54.2
 女性不妊手術5.35.30.8
 男性不妊手術1.21.1
 無回答2.62.4 1.1
2つまで回答  *調査規模4,000人  **調査規模2,700人
1996年と2000年のデータは毎日新聞社の人口問題調査会による「全国家族計画世論調査」
2016年データは日本家族計画協会による「男女の生活と意識に関する調査」「いつも避妊している/避妊したりしなかったりしている」との回答者の避妊方法について
なお1999年に日本で経口避妊薬が承認された


 欧米では年齢や状況によって用いる避妊法が異なっています。それぞれの方法の長所、欠点、しくみを理解したうえで自分の人生設計にあわせた適切な方法を選択することが大切です。おもな避妊法として、低用量OC、銅付加IUD、IUS、コンドーム、腟外射精法、不妊手術などがあげられ、無防備な性交をもった場合は、予期せぬ妊娠を回避するために緊急避妊法があることを知っておく必要があります。

●各種避妊法使用開始1年間の避妊失敗率(妊娠の頻度)
 100人の女性が使用1年間で何人妊娠するか=パール指数
 ピル(OC)0.3~9(0.29
 避妊手術(男性)0.1~0.15
 避妊手術(女性)0.5
 銅付加タイプ子宮内避妊用具
(Cu-IUD)
0.6~0.8
 子宮内避妊システム(IUS)0.2~0.2
 コンドーム2~18
 リズム法3~24
 殺精子剤18~28
 性交中絶法4~22
 避妊しなかった場合85
Trussell J:Contraception,2011
*;日本人女性5,049例に対するピル承認申請時のデータ:ピル8品目、パール指数 0.00-0.59の平均値;投与症例数および投与周期数を反映して修正(松本清一:メディカルファイル,1991)



(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 名誉院長 安達 知子