アルツハイマー型認知症薬「レカネマブ」の米国での正式承認は、エーザイの収益を押し上げそうだ。同社は、新薬には既存薬と異なり、症状の進行を遅らせる効果があることから、欧米と日本で普及が進むとみており、売上高に相当する売上収益はレカネマブだけで2030~32年に世界全体で年1兆円レベルになると想定する。
 エーザイによると、国内のアルツハイマー病患者数は500万~600万人程度で推移し、潜在的な市場規模は大きい。焦点は承認取得後に国が算定する薬価だ。内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は「社会的な価値に基づいて設定されるべきだ」と主張する。同社と横浜市立大医学部の五十嵐中准教授による試算では、レカネマブの価値は家族の介護負担軽減などを含め年間で最大約467万円に達する。
 一方、アルツハイマー病治療薬を巡っては、海外製薬企業との開発競争も激化している。米大手イーライリリーが開発中の「ドナネマブ」は、臨床試験で薬を投与しない患者に比べ、症状悪化を35%抑制する効果が確認された。現状はエーザイが一歩リードしているが、今後は強力な競合薬も登場しそうだ。 (C)時事通信社