発症後4.5時間以内の急性虚血性脳卒中(AIS)にはアルテプラーゼ(t-PA) 静注による血栓溶解療法が推奨されているが、AISの約半数を占める軽症例へのベネフィットについては結論が得られていない。一方、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)も発症後2週以内であれば脳卒中再発に有効とされている。中国・General Hospital of Northern Theatre CommandのHui-Sheng Chen氏らは、障害がない軽症AISを対象に多施設非盲検ランダム化比較試験(RCT)ARAMISを実施。DAPTのt-PA静注に対する非劣性が示されたとJAMA2023; 329: 2135-2144)に報告した。

クロピドグレル+アスピリンをt-PA静注と比較

 Chen氏らは、2018年4月〜22年4月に中国の38施設で米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアが5点以下かつ各項目スコアが1点以下で18歳以上の成人AIS患者を登録。発症後4.5時間以内にDAPT群またはt-PA静注群に1:1でランダムに割り付けて最長で2022年7月18日まで追跡し、t-PA静注に対するDAPTの非劣性を検証した。

 DAPT群ではクロピドグレル(300mgを初日に投与後、75mg/日を12日間投与)+アスピリン(100mgを初日に投与後、100mg/日を12日間投与)併用後に90日までガイドラインに基づく抗血小板療法を実施。t-PA静注群ではt-PAを0.9mg/kg(最大用量90mg)を投与し、24時間後にガイドラインに基づく抗血小板療法を開始した。

90日でのmRSスコアはDAPT群93.8%、t-PA静注群91.4%

 解析対象は、DAPT群が369例、t-PA静注群が350例。検討の結果、主要評価項目とした90日時点のmodified Rankin Scale(mRS)スコアが0/1(転帰良好)の割合は、DAPT群が93.8%、t-PA静注群が91.4%だった(リスク差2.3%、未調整95%CI −1.5〜6.2%、P<0.001)。片側97.5%CIの未調整下限値は−1.5%で、非劣性マージンの−4.5%を上回ったためDAPT群の非劣性が示された(非劣性のP<0.001)。

 安全性については、90日間の症候性脳出血の発生はDAPT群が1例(0.3%)、t-PA静注群が3例(0.9%)であった。

 以上の結果について、Chen氏らは「発症後4.5時間以内の軽症AISにおける治療開始90日時点での良好な機能転帰に関し、t-PA静注に対するDAPTの非劣性が示された」と結論している。

(山田充康)