新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、厚生労働省は今年(2023年)秋以降、公費負担は継続しながらもワクチンの接種勧奨は重症化リスクが高い人に限定すると決定した。これを受けて日本小児科学会は10月3日に見解を発表。同学会は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の小児感染者においてまれながら急性脳症や心筋炎の発症例が報告されていることなどを懸念し、生後6カ月以上の全ての小児に対し、引き続きSARS-CoV-2ワクチン接種を推奨するとした。

従来のワクチンでは感染予防できず

 SARS-CoV-2のオミクロン亜系統は、今年5月以降BA.2、BA.5からXBB.1系統に変化し、さらにEG.5系統の割合が増加している。従来のワクチン(起源株1価ワクチンまたはBA2・BA5の2価ワクチン)やXBB.1系統以前の感染によって得られた免疫は、現在増加傾向にある亜系統による感染を十分に予防できず、既感染者でも再感染することが報告されている。今後、インフルエンザなど他の季節性感染症と同時に流行が拡大することも懸念される。

 一方、今年度の秋冬接種に用いられるXBB.1.5対応の1価ワクチンは、従来の2価ワクチンよりもXBB.1.5系統株に対して高い中和抗体価を誘導し、発症予防効果が増強されるとの報告がある。

ワクチン追加接種による死亡抑制効果64.5%

 小児に対するワクチン接種には、発症や重症化、入院の予防効果が示されている。ワクチンの長期的効果を検討するために11歳以下の小児100万人以上を対象として実施された米国の調査では、5~11歳児における初回接種(2回接種)、および追加接種の有効性が示された(Lancet Infect Dis. 2023; S1473-3099: 00272-4)。

 調査によると、2価ワクチンを用いた追加接種による発症防効果は接種後1カ月時点で76.7%と高かった。さらに0~4歳児における初回接種(3回接種)の発症予防効果は接種後2カ月時点で63.8%、5 カ月時点でもなお58.1%を示した。また、いずれの年齢群においても、発症予防効果を上回る重症化および入院予防効果が確認されている。

 5~25歳の小児および若年成人に対するワクチンの死亡抑制効果を検討した海外の報告では、オミクロン株流行期における2回接種による死亡抑制効果は42%(95%CI 31.0~51.4%)で、追加接種により64.5% (同43.3~77.8%)まで増強されるとの結果が示された(JAMA Pediatr 2023; 177: 1100-1102)。

 日本小児科学会が、生後6カ月以上の全ての小児にSARS-CoV-2ワクチン接種を推奨する主な理由は以下の通り。

① 流行株の変化により今後も流行拡大が予想される

② 国民の約半数は未感染者であり、今後も感染機会が続く

③ 小児においても重症例・死亡例が発生している

④ 小児へのワクチンは有効である

⑤ 小児のワクチン接種に関する膨大なデータが蓄積され、より信頼性の高い安全性評価が継続的に行われるようになった

服部美咲