大阪公立大学大学院整形外科学講師の池渕充彦氏らは、集中治療室(ICU)で挿管呼吸管理下の重症コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対して早期リハビリテーション(以下、早期リハ)を実施。早期リハは重症COVID-19患者に有効であるとProg Rehabil Med (2023年9月13日オンライン版)に発表した。

坐位達成数、立位達成数、IMSが有意に改善

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は高い感染力を持つため、リハによる介入は軽快した後に行われることが多い。そのため、十分に体力が回復した状態で退院できる患者は少なかった。そこで池渕氏らは、ICU入室の重症COVID-19患者に対する早期リハの有効性を検討した。

 対象は、2021年4~6月に同大学(当時・大阪市立大学)病院ICUに入室した重症COVID-19患者57例(男性45例、63.2±12.1歳)。うち34例に対し、覚醒度に合わせて呼吸、坐位、関節可動域、筋力強化、立位、歩行などの早期リハを実施。実施しなかった非介入群と日常生活活動性を比較した。

 なお、日常生活活動性の指標として、坐位、立位、歩行、身体能力を10段階で評価する集中治療室活動度スケール(IMS)を用いた。

 転院時/退院時に生存していたのは36例だった。検討の結果、非介入群に比べ介入群(19例)では、坐位および立位を達成した割合がいずれも有意に高かった(それぞれ7例 vs. 15例、3例 vs. 12例、いずれもP<0.05)。また、転院時/退院時のIMSスコアは非介入群に比べ介入群で有意に高かった(P<0.05)。一方、死亡率に両群で有意差はなかった。

 これらの結果から、同氏は「ICUでの早期リハの実施により、日常生活活動性が早期に回復する可能性が示された」と結論している。

 同氏は「懸念されていたリハスタッフへの接触感染や患者の急変・医療事故などの事例はなく、重症COVID-19患者に対する早期リハ介入は安全に施行できた」とし、「早期リハによる介入効果は多くの先行研究で報告されている。一方、接触感染や患者の急変などさまざまなリスクが指摘されている。今後は事前学習やマニュアル等の整備や十分な指導、教育を行うことで、未知なる感染症においても応用が期待される」と展望した。

栗原裕美