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「第2波」を警戒せよ
新型コロナ、欧米とアジアで差も―専門家

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため全国に出されていた緊急事態宣言が5月25日、解除された。外出や飲食店の営業、イベント開催の自粛、商業施設などの休業などが緩和される。しかし、その反動として「第2波」の流行再燃が懸念され、感染症の専門家は警鐘を鳴らしている。

緊急事態解除から一夜明けた東京駅

緊急事態解除から一夜明けた東京駅

◇「日本の奇跡」?

 日本は法的な強制力に基づく行動規制や、感染の有無を調べるPCR検査を大規模に実施しなかったなど、欧米各国とは異なる対策を取ってきた。

 これについてはさまざまな批判が寄せられた一方、死者は713人(5月16日時点)で、人口10万人あたりの死亡者数は0.56人と低く押さえ込んだ。

 多くの犠牲者を出し厳しい対策を強いられたスペインが、同58人と日本の100倍以上も多く、対策が効果を上げて感染を抑えたとされるドイツでも9.47人と日本の17倍。同様に医療機関が破綻しなかったとされるオランダやスイスも20~30人台で、日本に比べて非常に多い。このため一部では、「日本の奇跡?」「日本の対策が有効だった」との声も上がっている。

菅谷憲夫客員教授

菅谷憲夫客員教授

 ◇未解明なコロナ

 しかし、世界保健機関(WHO)重症インフルエンザガイドライン委員で慶應大学医学部の菅谷憲夫客員教授は、「この感染症の流行が本格化した時期や、統計の精度に違いはあるかもしれないが、アジア各国の人口10万人当たりの死亡者数は、日本と同程度か、より少ない。原因はまだ解明されていないが、日本の対策が特別有効だったと評価して油断することはできない。今年秋からと予想される流行の『第2波』に備える必要がある」と力説する。

 菅谷客員教授の計算では、10万人あたりの死者数はインドが0.20人、「震源地」である中国でさえ、0.32人で日本より少ない。「年齢構成や行政統計の信頼度が類似していると思われる韓国は0.51人、対策が効果を発揮し、感染を押さえ込んだとされる台湾は0.03人だ。「アジア諸国を見れば、日本だけが特別に死者が少ない訳ではない」と分析する。

 その上で「医療現場で感染の危険にさらされた医療スタッフの尽力が重要な要素だったのは確かだが、ドイツやスイスなどよりアジア諸国の方が集中治療室(ICU)や人工呼吸器が普及しているとは思えない。医療以外の要素が介在していると考えるべきだろう」と言う。

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