孤独感はうつ病や運動不足、糖尿病などの要因となり、さらにストレスによって脳の健康を損なう可能性があるため、精神疾患や神経変性疾患のリスクと関連することが報告されている。しかし、パーキンソン病(PD)のリスク上昇につながるかについては不明である。米・Florida State University College of MedicineのAntonio Terracciano氏らは、英国のUK Biobankに登録された約50万例を対象とした15年間にわたる追跡調査により、孤独感とPD発症との関連を初めて明らかにし、JAMA Neurology2023年10月2日オンライン版)に発表した。

孤独を感じる人のPD発症リスクは1.37倍

 研究対象は、UK Biobankにおいて、2006年3月13日~10年10月1日に英国国民保健サービスを通じてPDを未発症であることが確認され、孤独を感じるか否かについて聞き取りをした49万1,603例。年齢は38~73歳(平均年齢56.54歳)、女性が54.4%を占めた。

 ベースライン時に「孤独を感じる」と回答したのは9万1,186例(18.5%)で、「孤独を感じない」と回答した40万417例(81.5%)と比べ、わずかに若く女性が多かった。また、社会的孤立や貧困、低学歴(学位所持の割合が低い)が多く、健康リスク行動(喫煙、身体活動が少ない)、身体的健康状態の悪化(糖尿病高血圧、心筋梗塞、脳卒中に罹患している割合が高い)、精神的健康状態の悪化(うつ病罹患、不安やうつ病のため精神科を受診の割合が高い)が認められた。

 追跡期間15.58年(平均12.33年)で2,822例がPDを発症した(PD発症率:606万2,197人・年当たり2,822人、10万人・年当たり47人)。このうち、「孤独を感じる」と回答した群は549例、「孤独を感じない」と回答した群は2,273例であった。

 「孤独を感じる」と答えた群(PD発症率:10万人・年当たり49人)は「孤独を感じない」と回答した群(同46人)に比べ、PDの発症リスクが高かった(ハザード比1.37、95%CI 1.25~1.51)。

 この関連性は、人口統計学的要因、社会経済的地位、社会的孤立、PDの遺伝的リスク、喫煙、身体活動、糖尿病高血圧脳卒中、心筋梗塞、うつ病、精神科医の受診歴を調整した後も維持された。

 PDの発症率は、年齢、性別、遺伝的リスクにより異なるが、孤独感とPD発症との関連性は年齢、性別、遺伝的リスクによって変わらなかった。また、この関連性は主観的な孤独体験に特有のものであり、社会的孤独の客観的な尺度としては観察されなかった。

孤独感への対処で、認知症リスク低下やQOL向上も

 Terracciano氏らは今回の知見を踏まえ、「孤独を感じている人は、人口統計学的要因や社会経済的要因、社会的孤立、遺伝的リスク、身体的・精神的健康などと関係なく、PD発症のリスクが高いことが分かった」と結論。「孤独感が実質的な健康の心理・社会的決定要因であるという証拠をさらに裏付けるもの」とした上で、今後の課題として「孤独感が広範な健康転帰に及ぼす影響も考慮すると、孤独感を軽減するための効果的な心理・社会的介入が必要である。PDの一次予防の可能性に加え、PD患者では孤独感に対処することが認知症リスクを低下させ、QOLが向上する可能性がある」と述べている。

(宇佐美陽子)