インド・Father Muller Medical CollegeのMyfanwy J. D'Souza氏らは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染による尋常性疣贅の患者60例を対象に、麻疹・ムンプス・風疹混合(MMR)ワクチンの病変内注射を行う免疫療法の有効性と安全性を前向き比較試験で検討。その結果、同国の研究で有効性が示されている85%ギ酸(カルボン酸)穿刺投与(Int J Dermatol 2001; 40: 415-419)と比べ治癒率が有意に高く、安全性プロファイルが良好だったとIndian J Dermatol2023; 68: 486)に発表した。

2週間隔5回治療後に62.5%で病変が完全消失

 同試験では、18歳超で全身療法または局所療法を受けていない単発または多発性(最大10病変)の尋常性疣贅患者60例を登録。30例ずつ、1病変当たり0.3mLのMMRワクチン病変内注射を行うMMRワクチン群と、26G皮下注射針を用いて85%ギ酸の穿刺投与を行うギ酸群に30例ずつ割り付けた。2週間隔で5回の治療を実施し、治療終了後3カ月まで追跡した。

 解析の結果、治療終了時点で、MMRワクチン群では62.5%が完全奏効(病変の完全消失)、33.3%が部分奏効(50~99%の病変縮小)、4.2%が無反応(0~49%の病変縮小)で、ギ酸群ではそれぞれ31.8%、63.6%、4.5%だった。治癒率はMMRワクチン群で有意に高かった(P=0.031)。

 両群とも、治療終了後3カ月の追跡期間中に再発は認められなかった。

注射部位だけでなく遠隔部位の疣贅にも有効

 安全性の評価では、MMRワクチン群の全例に中等度~重度の注射時疼痛、4例(13.3%)に紅斑、8例(26.7%)に炎症後色素沈着が認められた。ギ酸群では8例(26.7%)に灼熱感が認められた。介入を要する副反応および重篤な副反応はなかった。

 D'Souza氏らは「MMRワクチンの病変内注射を行うと、各種の抗原および疣贅組織に対する遅延型過敏反応が引き起こされ、さらにヘルパーT細胞1型(Th1)サイトカイン産生によりナチュラルキラー細胞の活性化を介してHPVが排除される。この治療法には、注射部位だけでなく遠隔部位の疣贅にも有効であるという、従来の疣贅の治療法にはない利点がある」と指摘。その上で「MMRワクチン病変内注射療法は治癒率が高く、安全性プロファイルが良好で、多発性疣贅患者に対して有望な治療法である」と結論している。

太田敦子