心房細動患者は将来的な認知機能障害や認知症のリスクが高いことが疫学的に示されているが、心房細動の発症年齢と認知症リスクとの関連は明確でない。中国・Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical CollegeのWenya Zhang氏らは、英国のオープンデータベースを用いて心房細動の発症とその後の認知症発症を前向きに追跡。その結果、心房細動の発症年齢が若いほど認知症発症リスクが高いことを明らかにし、JAMA Netw Open2023; 6: e2342744)に報告した。

UK Biobankを用いた前向きコホート研究

 解析対象は、UK Biobank登録者で研究参加に同意した者のうち、2006〜10年のベースライン時に認知症または脳卒中の既往がある者、データ欠損者、追跡中に心房細動に先行して認知症を発症した者は除外した43万3,746例。心房細動認知症リスク上昇との関連について、年齢、性、教育歴、BMI、血圧、喫煙、飲酒、既往歴などを調整した多変量Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)を算出した。

 続いて、心房細動と診断された年齢のデータを有する3万601例を抽出、3つの年齢群(65歳未満、65〜74歳、75歳以上)に分け、認知症リスクとの関連を調べた。さらに、心房細動患者3万600例と心房細動のない6万1,299例を1:2でマッチングし、年齢群ごとに心房細動認知症の関連を検討する傾向スコアマッチング解析を行った。

65歳未満での心房細動発症例の認知症リスクが最も高い

 中央値で12.6年(四分位範囲12.1〜13.6年)の追跡期間中の新規認知症発症は5,898例(アルツハイマー型認知症2,546例、血管性認知症1,211例)で、心房細動患者における認知症発症者は1,031例(同350例、320例)だった。

 多変量Cox比例ハザードモデルの結果、心房細動患者では全ての認知症〔調整後HR(aHR)1.42、95%CI 1.32〜1.52、P<0.001〕および血管性認知症(同2.06、1.80〜2.36、P<0.001)の発症リスクが有意に高かったが、アルツハイマー型認知症リスク上昇は認められなかった(同1.08、0.96〜1.21、P=0.20)。

 次に、心房細動患者における心房細動と全ての認知症アルツハイマー型認知症、血管性認知症との関連を発症年齢群別に検討したところ、心房細動の診断時年齢が若いほどいずれの認知症発症リスクとも有意に上昇した(認知症:10歳低下当たりのaHR、1.23、95%CI 1.16〜1.32)、アルツハイマー型認知症:同1.27、1.13〜1.42、血管性認知症:同1.35、1.20〜1.51、全てP<0.001)。

 傾向スコアマッチング解析の結果、心房細動のない人と比べ診断時年齢が65歳未満群では全ての認知症発症リスクが最も高く(aHR 1.82、95%CI 1.54〜2.15、P<0.001)、次いで65~74歳群(同1.47、1.31〜1.65、P<0.001)、75歳以上群(同1.11、0.96〜1.28、P=0.18)の順で、アルツハイマー型認知症および血管性認知症においても同様の傾向が示された。

 以上から、Zhang氏は「心房細動のない人と比べ、心房細動患者は心房細動診断後の認知症リスクが高いこと、診断時年齢が若いほど全ての認知症アルツハイマー型認知症、血管性認知症の発症リスクが高いことが明らかになった。心房細動患者の認知症リスクを減弱させる上で、特に診断時に65歳未満の例に対する認知機能モニタリングが重要だ」と述べている。

編集部