オーストラリア・University of SydneyのAnna L. Seidler氏らは、在胎37週未満の早産児に対する臍帯結紮(クランプ)の方法を検討したランダム化比較試験(RCT)48件・6,367例の個人データ(individual participant data)に基づくメタ解析を実施。その結果、臍帯結紮を出生後10秒以内に行う臍帯早期結紮と比べて、出生後30秒以上経過してから行う臍帯遅延結紮では退院前死亡率が低下するという確実性の高いエビデンスが示されたとLancet2023年11月14日オンライン版)に発表した。

早期結紮に対する退院前死亡のオッズ比0.68

 Seidler氏らは、医学データベース(MEDLINEなど)と臨床試験登録サイト(ClinicalTrials.govなど)を2023年6月6日まで検索。早産児に対する臍帯結紮の方法(臍帯遅延結紮、臍帯ミルキング、臍帯早期結紮)を比較したRCT 48件・新生児6,367例〔男性3,303例(55%)、女性2,667例(45%)、間性(intersex)2例、データ欠測395例〕を抽出しメタ解析に組み入れた。主要評価項目は退院前死亡とした。

 解析の結果、臍帯遅延結紮群では臍帯早期結紮群と比べて退院前死亡率が低いことが認められた〔オッズ比(OR)0.68、95%CI 0.51~0.91、エビデンスの確実性:高い、20件・3,260例、死亡232例〕。

 臍帯ミルキング群では、臍帯早期結紮群との比較(OR 0.73、95%CI 0.44~1.20、エビデンスの確実性:低い、18件・1,561例、死亡74例)、臍帯遅延結紮群との比較(同0.95、0.59~1.53、エビデンスの確実性:低い、12件・1,303例、死亡93例)のいずれでも、退院前死亡率の差を示す確実なエビデンスは認められなかった。

在胎32週未満児で低体温症のリスク上昇

 主要評価項目のサブグループ解析では、在胎週数、分娩方法(帝王切開、経腟分娩)、胎児数(単胎分娩、多胎分娩)、試験実施年、試験地域の周産期死亡率による差は認められなかった。

 以上の結果から、Seidler氏らは「臍帯早期結紮と比べて、臍帯遅延結紮により早産児の退院前死亡率が低下するという、確実性の高いエビデンスが示された」と結論している。

 ただし、在胎32週未満の早産児に限定した副次評価項目の解析で、臍帯遅延結紮群では臍帯早期結紮群と比べて低体温症(36.5℃未満)のリスクが上昇していた(OR 1.28、95%CI 1.06~1.56、エビデンスの確実性:中等度、8件・1,995例)。この結果について、同氏らは「臍帯遅延結紮群の臍帯早期結紮群に対する平均体温差は-0.13℃(95%CI -0.20~-0.06℃)にすぎないが、臍帯遅延結紮を行う際には新生児の保温に特別の注意を払う必要があることを示している」と付言している。

太田敦子