近年、費用が安く副作用の少ない鍼治療が潰瘍性大腸炎の治療に用いられている。中国・Chengdu University of Traditional Chinese Medicine/Shanxi University of Traditional Chinese MedicineのJianheng Hao氏らは、潰瘍性大腸炎に対する鍼通電療法(電気鍼)の有効性と安全性をランダム化比較試験(RCT)12件・976例のメタ解析で検討。その結果、薬物療法を行った対照群と比べて電気鍼群で臨床的有効率および治癒率が有意に高かったとHeliyon2023; 9: e20789)に発表した。

薬物療法や中国医学との併用で高い効果

 Hao氏らは、PubMedなどの医学データベースに2023年1月3日までに収載された論文を検索。潰瘍性大腸炎に対する電気鍼(単独療法または他の治療との併用療法)の有効性を薬物療法と比較したRCT 12件・976例を抽出しメタ解析を行った。

 12件のRCTにおいて電気鍼に用いられた経穴は、任脈、膀胱経、胃経、脾経、肝経の経絡上の16穴で、最も使用頻度が高かったのはRN4(関元穴)とST25(天枢穴)の組み合わせだった。

 臨床的有効率および治癒率の解析(11件・各群458例)では、薬物療法を行った対照群と比べて電気鍼群で臨床的有効率〔リスク比(RR)1.27、95%CI 1.19~1.36〕および臨床的治癒率(同1.73、1.43~2.09)が有意に高かった(全てP<0.01)。

 サブグループ解析では、対照群と比べて西洋医学(薬物療法)または中国医学、あるいは両者と電気鍼の併用群で対照群と比べて臨床的有効率および治癒率が有意に高かった(全てP<0.01)。一方、電気鍼単独群では臨床的有効率(RR 1.12、95%CI 0.93~1.35、P=0.23)、臨床的治癒率(同1.18、0.63~2.20、P=0.6)ともに対照群と有意差がなかった。

内視鏡的有効性、TNFα低下も

 粘膜病変の大腸内視鏡検査に基づく有効率および治癒率の解析(3件・各群135例)では、対照群と比べて電気鍼群で内視鏡的有効率が有意に高かったが(RR 1.24、95%CI 1.11~1.38、P<0.01)、内視鏡的治癒率は両群で有意差がなかった(同1.54、1.05~2.24、P=0.03)

 炎症マーカーである腫瘍壊死因子(TNF)αの解析(2件・各群70例)では、対照群と比べて電気鍼群で血清TNFα濃度が有意に低下していた(平均差-41.11、95%CI -46.01~36.22、P<0.01)。

 副作用の解析(6件・各群251例)では、両群の発現率に有意差はなかった(電気鍼群30例 vs. 対照群40例、RR 0.75、95%CI 0.49~1.15、P=0.19)。

 Hao氏らは「今回の解析対象となったRCTはサンプルサイズが小さく、全体的に研究の質が低かった。また、患者の追跡データが得られなかったため、潰瘍性大腸炎に対する電気鍼の長期効果は評価できなかった」と研究の限界を指摘。「今後、質の高い大規模多施設RCTを行って今回の結果を検証し、患者の予後を長期追跡する必要がある」と述べている。

※P=0.03ですが、論文の表記通り「有意差がなかった」と記載しています。

(太田敦子)