18トリソミー症候群は18番染色体の全長または一部の重複に基づく先天異常症候群で、発生率は出生児3,500~8,500人当たり1人と推計される。先天性心疾患をはじめとする重篤な合併症のために生存率が低く、発達遅滞を伴うことから以前は積極的な治療介入が控えられていたが、近年では治療法の開発により生存率が向上し、QOL改善を目的とした介入が模索されている。一方、18トリソミー症候群では高頻度に難聴が合併するが詳細な報告は少なく、治療法も確立されていない。長野県立こども病院耳鼻咽喉科部長の佐藤梨里子氏、信州大学耳鼻いんこう科頭頚部外科学教室教授の工穣氏らは、18トリソミー症候群患児における難聴の臨床的特徴および補聴器の装用効果を検討する前向きコホート研究を実施。補聴器装用により聴力および対人反応の改善が見られたとの結果をAm J Med Genet A2023年12月7日オンライン版)に報告した。

22例中21例が両側中等度~重度難聴を合併

 対象は、2000年1月~21年4月に長野県立こども病院で18トリソミー症候群と診断された74例のうち、聴覚定常反応(ASSR)検査を含む総合的な聴覚評価を受けた22例(男児9例、女児13例)。

 まず空気伝導聴力および骨伝導聴力についてASSR検査を行ったところ、21例(96%)に両側中等度~重度難聴が認められた。難聴のタイプ別に見ると、21例42耳のうち12耳(29%)が伝音性、3耳(7%)が感音性、26耳(62%)が混合性の難聴で、1耳(2%)が正常聴力であった。

 次に生後5~84カ月の19例38耳(平均月齢35.6カ月、男児8例、女児11例)に側頭骨CT検査を行った。その結果、16耳(42%)に小耳症が認められ、15耳は軽度で無耳症は1耳であった。12耳(32%)に先天性外耳道閉鎖症(CAA)、24耳(63%)に先天性外耳道狭窄症(CAS)があり、2耳(5%)は正常だった。

 原因部位は外耳道と中耳の複合異常が最多で29耳(76%)、次いで外耳道+中耳+内耳の複合異常が5耳(13%)で、計34耳(89%)に外耳道と中耳の奇形が認められた。

 中耳滲出液と耳小骨奇形を評価したところ、36耳(95%)になんらかの中耳の異常が認められた。滲出液は18耳(47%)、奇形は槌骨が25耳(66%)、切頭が22耳(58%)、アブミ骨が13耳(34%)で、内耳平衡骨、内耳鼻骨の異常がそれそれ10耳(26%)、16耳(42%)に見られた。一方、内耳奇形は6耳(16%)のみで、蝸牛低形成Ⅲ型が2耳、蝸牛神経管形成不全が4例であった。

全17例で聴力が改善

 補聴器の装用効果については、死亡例および不同意例を除外した17例(平均装用開始年齢19カ月、範囲5~48カ月)を対象に、条件詮索反応聴力(COR)検査を行い評価した。補聴器の種類は、骨伝導が9例、耳かけ型が8例だった。

 解析の結果、補聴器を装用した全例で聴力閾値の改善が認められた(非装用時平均80.9dB vs. 装用時平均55.6dB、P<0.05)。また呼ばれたときに振り向く、微笑む、声を出すなど対人反応の改善も4例で報告された。

 以上の結果について、佐藤氏らは「18トリソミー症候群患児では中等度~重度の難聴を高頻度に合併し、伝音性または混合性難聴が多く、外耳~中耳奇形が大半を占め内耳奇形は少ないなどの臨床的特徴が明らかとなった。また補聴器装用は聴力改善に有効であり、対人コミュニケーションの改善に役立つ可能性も示された。包括的な発達支援の観点からも、補聴器装用は妥当な介入であると考えられる」と結論している。

服部美咲