先天異常
先天異常とは、からだや内臓のかたち、はたらきに生まれつきある異常をいいます。かたちの異常は、「奇形」といわれ、顔や手足など、見てすぐにわかる外表奇形と、心臓や腎臓などの内臓奇形があります。先天代謝異常など、かたちは正常でも内臓のはたらきに異常がある場合も、先天異常に含まれます。
■原因
先天異常の原因として、染色体や遺伝子の異常と、感染や薬などの環境要因があります。からだは多くの遺伝子をもとにしてつくられますが、その一つあるいはいくつかの遺伝子の異常により特有な奇形が起こります。奇形には、内臓のはたらきに問題ないものから、すぐに手術や治療が必要なものまでいろいろあります。いろいろな先天異常を起こす遺伝子の異常があきらかになっています。
先天異常の発生時期は、以下の4つに分けられます。
1.父親の精子または母親の卵子に異常がある場合。染色体異常や遺伝子異常による病気があります。
2.妊娠初期に、子宮内の胎児に障害が加えられた場合。妊娠3カ月ごろまでは、胎児のからだや内臓がつくられていく大切な時期です。この時期に感染や薬などにより障害が加えられるとからだのいろいろな部分に奇形を生じます。母親が風疹(ふうしん)にかかったときに子どもに奇形があらわれる先天性風疹症候群、一部の抗けいれん薬のような薬による奇形などが知られています。
3.妊娠後半に胎児が障害されたために異常が発生するもの。奇形の程度は軽く、機能異常が強くあらわれます。先天梅毒、先天性トキソプラズマ症、先天性サイトメガロ感染症などがあります。
4.出産の前後に障害が加わり異常が発生するもの。脳性まひの一部が入ります。
■遺伝と遺伝病
□遺伝とは
親子、兄弟は顔つき、体型や性格が似ています。このように親から子へ性質が受け継がれることを「遺伝」といいます。これらの親から子へ受け継がれる、からだのかたちやはたらきを決める情報のもとになるものを「遺伝子」といいます。
遺伝子は、デオキシリボ核酸(DNA)という物質でつくられています。遺伝子は、からだ全部の細胞の核という部位に存在する染色体というひも状のものに載っています。ヒトでは、常染色体が2本ずつ22組と、性染色体が女性はXが2本、男性はXとY各1本の計46本からなります。精子や卵子には、2本の同じ染色体の1本ずつが含まれ(配偶子)、子どもは、親の遺伝情報が半分ずつ伝えられます。
染色体の数が異常になる、染色体が切れて他の部位につながるような異常を染色体異常といいます。遺伝子に異常があって起こる病気を遺伝病といいます。
遺伝病には、1つの遺伝子の異常で起こる単一遺伝子病と、いくつかの遺伝子の変化と環境の影響で起こる多因子遺伝病があります。多因子遺伝病には、奇形や糖尿病などの生活習慣病と呼ばれるものなどがあります。
□単一遺伝子病
遺伝子は、たんぱく質の合成を支配しています。からだの中では栄養を分解し、必要なものに合成したり、不要になったものを分解したりするいろいろな代謝反応が多数の酵素によっておこなわれています。
酵素はたんぱく質であり、遺伝子の指令によってつくられます。遺伝子に異常があって、正常な酵素がつくられない場合、からだに必要な成分がつくられなくなったり、不要なものがたまったりして、それぞれの酵素の機能やはたらいている場所によっていろいろな症状が出ます。このような病気を先天代謝異常といいます。また、酵素以外でもからだをつくる、あるいはからだの中ではたらいているたんぱく質がつくられないために起こる病気もあります。筋肉をつくり、支えるたんぱく質が欠損し筋肉がこわれていく筋ジストロフィー、血液凝固に必要なたんぱく質がつくられないために起こる血友病などです。
□遺伝形式
遺伝子は、常染色体上には同じものが2本ずつあります。両親のどちらかから病気の遺伝子を受け継いだ場合、いっぽうが正常でも病気になる、つまり子どもが親と同じ病気になる場合は、「常染色体顕性(優性)遺伝病」です。子どもは2人に1人の割合で病気になります。
父、母両方から異常な遺伝子を受け継ぎ、両方の遺伝子が異常になったときにだけ発症するものを「常染色体潜性(劣性)遺伝病」といいます。この場合、両親は保因者であることが多く、子どもは25%の発症危険率であり、50%の保因者危険率があります。
X染色体の遺伝子に異常がある「X連鎖性潜性(劣性)遺伝病」では、男児は50%の危険率で発症し、女児は50%の危険率で保因者になります。
また、両親には遺伝子異常がなく、子どもに伝わるとき、突然変異として異常が生じることもあります。
常染色体顕性(優性)遺伝病…神経線維腫症、結節性硬化症、軟骨異栄養症、マルファン症候群、家族性多発性外骨腫、筋強直性ジストロフィーなど。
常染色体潜性(劣性)遺伝病…フェニルケトン尿症などの先天代謝異常、福山型先天性筋ジストロフィー、先天性副腎皮質過形成など。
X連鎖性潜性(劣性)遺伝…デュシャンヌ型筋ジストロフィー、血友病、ハンター症候群など。
■予防
血族結婚は、潜性(劣性)遺伝病が発病する危険性が高くなりますので、避けたほうがいいでしょう。フェニルケトン尿症のように、病気の発見が早くて治療が早く始められれば、知的発達症(知的障害)のような重大な障害を防げる病気もありますし、出生前診断が可能な病気もあります。全国のおもな施設で遺伝カウンセリングの態勢がととのえられてきています。遺伝性疾患の発病の危険性や対応法について、遺伝相談が可能ですので、専門医とよく相談し対策をたてるようにしましょう。
■遺伝子治療
遺伝子治療とは、ある病気の原因の遺伝子異常がわかっている場合、正常な遺伝子をからだの中に入れて病気を治そうとする治療法です。
がんや種々の遺伝病に対し、日本を含め、各国で治療法の開発が研究されており、実用化が始まっています。今後、飛躍的に治療可能な疾患がふえてくるでしょう。
■医療費助成
多くの病気が小児慢性特定疾患あるいは難病医療費助成制度の対象疾患(指定難病)に指定されており、これらの病気では医療費の公的負担が受けられます。小児慢性特定疾病情報センターや難病情報センターの広報やホームページで確認してください。
■原因
先天異常の原因として、染色体や遺伝子の異常と、感染や薬などの環境要因があります。からだは多くの遺伝子をもとにしてつくられますが、その一つあるいはいくつかの遺伝子の異常により特有な奇形が起こります。奇形には、内臓のはたらきに問題ないものから、すぐに手術や治療が必要なものまでいろいろあります。いろいろな先天異常を起こす遺伝子の異常があきらかになっています。
先天異常の発生時期は、以下の4つに分けられます。
1.父親の精子または母親の卵子に異常がある場合。染色体異常や遺伝子異常による病気があります。
2.妊娠初期に、子宮内の胎児に障害が加えられた場合。妊娠3カ月ごろまでは、胎児のからだや内臓がつくられていく大切な時期です。この時期に感染や薬などにより障害が加えられるとからだのいろいろな部分に奇形を生じます。母親が風疹(ふうしん)にかかったときに子どもに奇形があらわれる先天性風疹症候群、一部の抗けいれん薬のような薬による奇形などが知られています。
3.妊娠後半に胎児が障害されたために異常が発生するもの。奇形の程度は軽く、機能異常が強くあらわれます。先天梅毒、先天性トキソプラズマ症、先天性サイトメガロ感染症などがあります。
4.出産の前後に障害が加わり異常が発生するもの。脳性まひの一部が入ります。
■遺伝と遺伝病
□遺伝とは
親子、兄弟は顔つき、体型や性格が似ています。このように親から子へ性質が受け継がれることを「遺伝」といいます。これらの親から子へ受け継がれる、からだのかたちやはたらきを決める情報のもとになるものを「遺伝子」といいます。
遺伝子は、デオキシリボ核酸(DNA)という物質でつくられています。遺伝子は、からだ全部の細胞の核という部位に存在する染色体というひも状のものに載っています。ヒトでは、常染色体が2本ずつ22組と、性染色体が女性はXが2本、男性はXとY各1本の計46本からなります。精子や卵子には、2本の同じ染色体の1本ずつが含まれ(配偶子)、子どもは、親の遺伝情報が半分ずつ伝えられます。
染色体の数が異常になる、染色体が切れて他の部位につながるような異常を染色体異常といいます。遺伝子に異常があって起こる病気を遺伝病といいます。
遺伝病には、1つの遺伝子の異常で起こる単一遺伝子病と、いくつかの遺伝子の変化と環境の影響で起こる多因子遺伝病があります。多因子遺伝病には、奇形や糖尿病などの生活習慣病と呼ばれるものなどがあります。
□単一遺伝子病
遺伝子は、たんぱく質の合成を支配しています。からだの中では栄養を分解し、必要なものに合成したり、不要になったものを分解したりするいろいろな代謝反応が多数の酵素によっておこなわれています。
酵素はたんぱく質であり、遺伝子の指令によってつくられます。遺伝子に異常があって、正常な酵素がつくられない場合、からだに必要な成分がつくられなくなったり、不要なものがたまったりして、それぞれの酵素の機能やはたらいている場所によっていろいろな症状が出ます。このような病気を先天代謝異常といいます。また、酵素以外でもからだをつくる、あるいはからだの中ではたらいているたんぱく質がつくられないために起こる病気もあります。筋肉をつくり、支えるたんぱく質が欠損し筋肉がこわれていく筋ジストロフィー、血液凝固に必要なたんぱく質がつくられないために起こる血友病などです。
□遺伝形式
遺伝子は、常染色体上には同じものが2本ずつあります。両親のどちらかから病気の遺伝子を受け継いだ場合、いっぽうが正常でも病気になる、つまり子どもが親と同じ病気になる場合は、「常染色体顕性(優性)遺伝病」です。子どもは2人に1人の割合で病気になります。
父、母両方から異常な遺伝子を受け継ぎ、両方の遺伝子が異常になったときにだけ発症するものを「常染色体潜性(劣性)遺伝病」といいます。この場合、両親は保因者であることが多く、子どもは25%の発症危険率であり、50%の保因者危険率があります。
X染色体の遺伝子に異常がある「X連鎖性潜性(劣性)遺伝病」では、男児は50%の危険率で発症し、女児は50%の危険率で保因者になります。
また、両親には遺伝子異常がなく、子どもに伝わるとき、突然変異として異常が生じることもあります。
常染色体顕性(優性)遺伝病…神経線維腫症、結節性硬化症、軟骨異栄養症、マルファン症候群、家族性多発性外骨腫、筋強直性ジストロフィーなど。
常染色体潜性(劣性)遺伝病…フェニルケトン尿症などの先天代謝異常、福山型先天性筋ジストロフィー、先天性副腎皮質過形成など。
X連鎖性潜性(劣性)遺伝…デュシャンヌ型筋ジストロフィー、血友病、ハンター症候群など。
■予防
血族結婚は、潜性(劣性)遺伝病が発病する危険性が高くなりますので、避けたほうがいいでしょう。フェニルケトン尿症のように、病気の発見が早くて治療が早く始められれば、知的発達症(知的障害)のような重大な障害を防げる病気もありますし、出生前診断が可能な病気もあります。全国のおもな施設で遺伝カウンセリングの態勢がととのえられてきています。遺伝性疾患の発病の危険性や対応法について、遺伝相談が可能ですので、専門医とよく相談し対策をたてるようにしましょう。
■遺伝子治療
遺伝子治療とは、ある病気の原因の遺伝子異常がわかっている場合、正常な遺伝子をからだの中に入れて病気を治そうとする治療法です。
がんや種々の遺伝病に対し、日本を含め、各国で治療法の開発が研究されており、実用化が始まっています。今後、飛躍的に治療可能な疾患がふえてくるでしょう。
■医療費助成
多くの病気が小児慢性特定疾患あるいは難病医療費助成制度の対象疾患(指定難病)に指定されており、これらの病気では医療費の公的負担が受けられます。小児慢性特定疾病情報センターや難病情報センターの広報やホームページで確認してください。