能登半島地震で甚大な被害が出た石川県珠洲市で、医療用医薬品の調剤ができる車両「モバイルファーマシー」が活動を続けている。高血圧糖尿病など約60品目の薬を搭載しており、さらに複数台が被災地に投入される予定だ。同市は避難者の約半数が65歳以上の高齢者で、「いつも飲んでいる薬をもらえた」と安堵(あんど)する声が上がる。
 石川県薬剤師会によると、珠洲市内のモバイルファーマシーでは5人の薬剤師が調剤を行っており、災害派遣医療チーム(DMAT)や日本医師会災害医療チーム(JMAT)と連携し、抗菌薬やせき止めなど主に急性期症状に対応した薬を処方している。車両には非常用発電装置や飲料水、食料も搭載し、薬剤師らは車内で寝泊まりしている。
 8日に調剤を受けた矢鋪馨さん(66)は「痛風の持病があるので安心した」と話した。大阪府から実家へ帰省中に被災し、母親と避難所に滞在している。避難生活のストレスから痛風発作に悩まされており、別の薬を飲んでいたがあまり効果は感じていなかったという。
 県薬剤師会によると、9日には輪島市にモバイルファーマシーが到着予定で、三重県の薬剤師が活動を始める。宮城県や和歌山県などからも応援が入る予定で、最大20台までの車両投入が可能だという。
 石川県薬剤師会の中森慶滋会長は「これまでと全く同じ薬の処方ができるかは分からないが、少なくとも現状維持は可能。避難所ではインフルエンザがはやっているとの話もあるので、治療薬の手配もしたい」と話している。 (C)時事通信社