「実年齢より若い/老けている」と本人が感じる主観的年齢は、将来の健康状態を評価する上での生物心理社会的マーカーとして注目されている。畿央大学理学療法学科教授の高取克彦氏らは、主観的年齢が実年齢を上回る人では高次生活機能が有意に低く、要介護リスクが上昇する可能性が示されたと日本老年医学会雑誌(2023; 60: 373-381)に報告した(関連記事「老け顔と加齢関連疾患リスクが関連」)。
主観的年齢別に要介護認定の発生状況を3年間追跡
主観的年齢や老化感と疾患の発生との関係を調べた研究として、主観的年齢が高くネガティブな老化感を有する者は心疾患および脳卒中の発生リスクが高いことや、主観的年齢が高い人では低い人に比べ死亡率が高いことが報告されている(J Gerontol B Psycol Sci Soc Sci 2021; 76: 910-919、JAMA Intern Med 2015; 175: 307-309)。
高取氏らは、畿央大学と奈良県広陵町が連携して地域住民の健康増進および介護・認知症施策などに取り組むKAGUYA(Keeping Active across Generations Uniting the Youth and the Aged)プロジェクトの高齢者縦断調査に参加した地域在住高齢者を対象に、2016年に郵送式調査を実施した。
「気持ちの年齢」という問いに対し、「年相応」「実際の年齢より若い」「実際の年齢より上」の選択肢を設定し主観的年齢とした。その他、高次生活機能(老研式活動能力指標およびJST版活動能力指標)、抑うつ(Geriatric Depression Scale-5)、自己効力感(Geriatric Self-efficacy Scale)、運動習慣の定着状況(週1回以上)などを調査。3年後の2019年に追跡調査を行い、要介護認定の新規発生状況を確認した。追跡調査が可能であった2,323人を解析対象とし、主観的年齢と要介護状態の新規発生の関係を検討した。
新規介護認定発生のオッズ比は3.33
解析の結果、調査開始時に主観的年齢が「実際の年齢より上」と感じている群は要介護新規発生数が多く、「実際の年齢より若い」と感じている群では少なかった。また、「実際の年齢より上」と感じている群では高次生活機能(図1)、自己効力感が有意に低く、週1回以上の運動を行っている割合が少なかった。
図1. 主観的年齢と高次生活機能の関係
ロジスティック回帰分析の結果、他の因子を調整後も「実際の年齢より上」と感じていることは新規介護認定の独立した危険因子だった(オッズ比3.33、95%CI 1.02〜10.94、P<0.05、図2)。
図2. 主観的年齢と新規要介護発生リスクの関係
(図1、2とも畿央大学プレスリリースより)
以上から、高取氏らは「自覚的な年齢が実年齢を上回っている高齢者は、将来的に高次生活機能が低下しやすく、要介護リスクを上昇させる可能性がある」と結論。「日本で初めて、地域高齢者の主観的年齢と新規要介護発生の関係を縦断的に調査した。本研究の結果は、主観的年齢を評価することの重要性を示すとともに、新たな心理社会的アプローチを考える上で一助になると考えられる」と述べている。
(編集部)