「Sun Safety」「Be Sunsmart」...日光曝露による皮膚がん発生率の高い諸外国ではこうしたスローガンで日焼け対策を訴えており、一般人においてもその意識が高い。では、皮膚がん発生率が比較的低いアジア人における日光曝露に対する意識と対策はどうであろうか。昨年(2023年)、アジア6カ国8人の皮膚科医による国際パネルが開催され、オンラインアンケート結果を基に討論が行われた。同パネルでは、アジア人は皮膚がんよりも日光による肌の老化や色素沈着を懸念している上、日焼け予防対策が不十分と結論。日常的な日光防御の重要性について、さらなる教育が必要と提言した(Photodermatol Photoimmunol Photomed 2023年12月7日オンライン版)。

皮膚がんよりも光老化や色素沈着を懸念

 国際パネルはアジア6カ国(中国、韓国、日本、シンガポール、インドネシア、ベトナム)の皮膚科医8人で構成。日本からは名古屋市立大学大学院加齢・環境皮膚科学教授の森田明理氏が参加した。

 今回の検討に用いられたデータは世界17カ国1万7,000人を対象としたオンライン調査結果(J Eur Acad Dermatol Venereol 2023)から、中国、インドネシア、日本の各国人口の18歳以上の代表サンプルとなるデータを抽出。中国1,001人、インドネシア1,000人、日本1,000人の計3,001人のデータから、日光曝露によるリスクについての認識と対策に関するサブ解析を行った。

 紫外線に対する反応で肌のタイプを6つに分けるFitzpatrick分類を用いた自己評価では、3カ国ともⅡ〜Ⅳが7割以上を占め、Ⅲ(日焼けは中程度で、徐々に明るい褐色になる)が最も多かった。

 日焼けに対する好感度は高く、いずれの国でも「日焼けした肌は健康的」と評価する回答が6割以上あった。日光曝露のリスクは認識しているが、皮膚がんへの懸念(3カ国全体49%、日本59%)よりも光老化(同71%、79%)や色素沈着(同70%、79%)に対する懸念が大きいことが示された。

日本は日焼け対策の実践率が低い

 次に、日光曝露対策に関する解析結果が示された()。日焼け予防を考える上で重要な紫外線A波とB波(UVB)の違いを、回答者の多くが理解していないことが分かった(「理解している」:3カ国全体38%、日本14%)。日焼け予防についての基礎的な知識不足は、「季節を問わず日焼け対策を行っている」に対する「はい」の低回答率にも表れている(同27%、23%)。

表.アジア3カ国と世界17カ国における日焼け予防対策の実施状況(オンライン調査)

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Photodermatol Photoimmunol Photomed 2023年12月7日オンライン版)

「日焼け対策をあまり行っていない」には、中国人の9%、インドネシア人の9%、日本人の33%が「はい」と回答。「あらゆる日焼け対策を計画的/頻繁に行う」についても、「はい」と答えたのはそれぞれ22%、13%、3%で、アジア人の中でも特に日本人の実践率が低いことが明らかになった。この点について、同パネルは「興味深い」と評している。

 半数以上がクリームなどの日焼け止めを1日1回しか塗布しておらず(3カ国全体56%、日本70%)、UVB防御効果を有する日焼け止めのうち、SPF係数の高い(very high)ものを最も多く使うという回答はごく少数であった(同8%、13%)。

 子供の顔に日焼け止めを塗布するとの回答は3カ国全体で55%、日本は46%と、世界17カ国の74%に比べ低く、アジアでは子供の日焼け対策も不十分であることが示された。

 今回の結果について国際パネルは、解析対象が3カ国のみでアジア諸国全体に一般化はできないとしながらも、「アジア人は日焼け予防対策が不十分で、日光曝露の影響を過小評価している可能性がある」と結論。「UV防護服やサングラスの着用に加え、適切な日焼け止めを季節にかかわらず十分に塗布するなど日常的に日光曝露を防御することの重要性と、小児の日焼け予防についてさらなる教育を要する」と提言した。

(編集部)