血液透析患者において心不全は死因の第1位を占めるが、慢性心不全治療薬のイバブラジンの有効性および安全性については明らかになっていない。日本医科大学腎臓内科学教室の川崎小百合氏らは、慢性心不全を合併する透析患者を対象に多施設共同研究を実施。結果をTher Apher Dial(2024年1月10日オンライン版)に報告した。

血圧なく心拍数低下の期待

 日本透析医学会が2021年に実施した調査によると、慢性透析療法を受ける患者の死因の22.4%が心不全という。また、近年のデータでは慢性心不全と安静時心拍数に負の相関が示され、安静時心拍数と心血管イベントは相関関係にあることから、「透析患者の心拍数管理は慢性心不全治療において重要な課題だが、しばしば透析関連低血圧を合併するため、β遮断薬やACE阻害薬などによる適切な治療を妨げてしまう」と川崎氏ら。

 そこで同氏らは、日本では2019年に承認されたHCNチャネル遮断薬イバブラジンに着目。透析関連低血圧のリスクがあるためβ遮断薬を適切に増量することは困難だが、イバブラジンは陰性変力作用なしに心拍数のみを低下させる効果が期待できるという。しかし、現時点ではイバブラジンの透析患者に対する有効性および安全性に関するデータは不十分であることから、オープンラベルによる多施設共同介入研究を実施した。

 対象は安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全を有する20歳以上の透析患者で、透析導入後12カ月以上を組み入れ条件とした。イバブラジンに対する過敏症の既往例、急性心不全例などは除外した。

 6施設・18例を解析対象とし、12週間の介入における心拍数の変化、透析関連低血圧の発生頻度、健康関連QOLおよび有害事象を検討した。18例の主な背景は男性16例、平均年齢62.78歳、平均BMI 24.41、平均透析治療期間91.33カ月、平均透析治療時間3.75時間/回など。

心拍数は有意に低下、QOLも改善

 12週にわたりイバブラジンを投与し、各評価項目をベースラインと比較した。その結果、心拍数は有意に低下した(ベースライン時:87±12.61回/分、12週後:75.85±8.91回/分、P=0.0003)。収縮期血圧は有意に上昇したが(P<0.0001)、拡張期血圧に変化は見られなかった。さらに、透析関連低血圧の発生頻度は有意に減少した(P=0.0001)。36項目から成るSF-36を用いて評価した健康関連QOLでは有意な改善が認められた(P=0.0178)。

 なお、観察期間中に死亡が2例(重症大動脈弁狭窄症および原因不明の突然死)で認められたが、イバブラジン投与による深刻な有害事象は確認されなかった。

 以上から、川崎氏らは「慢性心不全を合併する血液透析患者へのイバブラジン投与により、安静時心拍数の低下や透析関連低血圧の減少、健康関連QOLの改善が示され、同薬の有効性と安全性が示唆された」と結論。サンプル数が少ないことなどから、より大規模かつ長期的な検討が必要との見解を示している。

編集部