治療・予防

病気かも?頭のかゆみやフケ
~学校の勉強、仕事に悪影響~

 かゆみやフケなど、頭皮のトラブルを抱えている人は珍しくないだろう。実は皮膚疾患が原因というケースもあるが、それに気付かず、放置している人も少なくない。重症化すると、仕事や学業、睡眠といった生活の質(QOL)を著しく低下させる上に、まれに脱毛になることもある。

頭部の乾癬(かんせん)

 製薬会社マルホが2020年11月、15~69歳の男女1200人を対象にしたインターネット調査によると、頭皮のトラブルを抱える人は20.7%で、5人に1人に上った。具体的には、「かゆみ」は72.7%、「フケ」45.5%、「ぶつぶつ・炎症・赤み」が42.8%となっている。あたご皮フ科(東京)の江藤隆史副院長は「長年の治療の経験からみても、大体その通りだ」と指摘する。

 頭部の皮膚疾患の原因には、乳幼児期に発症しやすいアトピー性皮膚炎や、頭や額の生え際など皮脂の分泌が盛んな部位に起きる脂漏性皮膚炎、赤い発疹の上に銀白色のフケのような垢(あか)が付着する乾癬(かんせん)などがある。日本を含めた世界各国の研究によると、アトピー性皮膚炎の患者の34%が頭部に湿疹ができていた。顔面や首の部分を含めると、湿疹などの病変がある人は42%に上る。

江藤隆史・副院長

 ◇頭をかき続け、出血も

 頭がかゆいことはよくあるが、程度がひどいと生活への影響は大きい。

 調査では「気が付くと、ずっと(頭)をかいている」が36.9%と、3人に1人の割合だ。「眠れない、または眠りが浅くなる」と「じっとしていられないことがある」同じ22.6%で、5人に1人の割合となっている。江藤副院長は「かゆみが強い場合、頭をかき続けて、気が付くと出血していることもある」と話す。

 ◇フケで結婚できない?

 フケもひどくなると、深刻だ。いつも、洋服の肩口にフケがたまっている。髪の毛にフケが白く浮いている。子どもの頃に悪口を言われたり、いじめられたりして引きこもりの経験がある人もいる。

 頭皮の悩みによる精神的な影響も大きい。周囲の人の視線が気になったり、集中力が散漫になったりし。さまざまなことに消極的になる。生活の質が低下するばかりか、「一生、結婚できないような気がする」、「友人や恋人をつくれない」などと、悩んでしまう場合もあるという。

 ◇歩いた跡がフケで

 江藤副院長は、患者のエピソードを紹介する。

 ある男性は重い乾癬で、床に落ちたフケの跡をたどることができたという。子どもに「パパ、私の部屋に入ったでしょう?分かるよ」と言われたこともある。

 やはりフケがひどかった男性は症状が改善した後、妻と共に来院した。「お父さんがいる土曜日、日曜日は、1日に3回掃除機をかけていた。良くなったら、家がきれいになり、2日に1回になった」。患者の妻は、江藤副院長に感謝の言葉を述べた。

 病院に通ったことがないという人に理由を聞いたところ、「通院するほどの症状ではないから」47.0%、「病気だと思っていないから」29.5%だった。江藤副院長は「火事に例えれば、早いうちに火を消せば、小さな消火活動で済む」と話し、早期の受診を勧める。

後頭部のアトピー性皮膚炎


 ◇かくと悪化、悪循環

 アトピー性皮膚炎は湿疹が主体で、一般的にかゆみが強い。NTT東日本関東病院(東京)の五十嵐敦之・皮膚科部長は「かゆいので、頭皮をかく。皮膚の炎症が悪化し、さらに、かゆみが強くなる。この悪循環を断ち切らなければならない」と話す。頭皮の湿疹・皮膚炎が長く続くと、炎症性の障害が毛髪の成長に関与する毛球部まで及び、まれに脱毛を引き起こす。また、重度の円形脱毛症がアトピー性皮膚炎を合併することもある。

 脂漏性皮膚炎には、「乳児型」と「成人型」があり、乳児型は正しいスキンケアによって自然に治癒するが、成人型は良くなったり、悪くなったりを繰り返す。成人型が40歳代以降の男性に多く見られることについて、五十嵐部長は「要因の一つとして、皮脂の分泌に男性ホルモンが関与しており、皮脂の分泌量が多い点が挙げられる」と説明する。

 ◇画期的なシャンプー剤

 治療薬は、ステロイド外用剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤などだ。脂漏性皮膚炎ではビタミン剤も用いられる。アトピー性皮膚炎では注射剤という方法もあるが、すべての医療機関で治療を受けられるわけではない。

五十嵐敦之・部長

 外用剤薬剤形には、軟こうやクリーム、ローションなどがあるが、「べたつく」、「見えない部分が塗りにくい」、「垂れて気になる」といった不満を持つ患者も多い。五十嵐部長が「患者の利便性を考えると、画期的」と評価するのが、最近、湿疹にも保険適用された「ステロイドシャンプー剤」だ。このシャンプー剤を頭部に塗った後、約15分待ち、洗い流す。「ショート・コンタクト・セラピー」と呼ばれ、五十嵐部長は「ステロイドによる副作用を少なくしながら、治療効果を発揮するという考え方だ」と話す。

 受診すべきときはいつか。五十嵐部長は「フケで仕事の相手先に不快な思いをさせた。頭がかゆくて授業に集中できない。こうした日常生活での支障を感じたときには受診を」とアドバイスする。(鈴木豊)

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