京都大学病院リウマチセンターの藤井貴之氏らは、KURAMA(Kyoto University Rheumatoid Arthritis Management Alliance)コホートのデータを解析した結果、「過去10年間の関節リウマチ(RA)の転帰は、生物学的製剤や分子標的型疾患修飾性抗リウマチ薬(b/tsDMARD)の登場で大きく改善した」と Arthritis Res Ther(2024; 26: 16)に報告した。

CDAI寛解率は10年で25.1%→48.1%

 KURAMAコホートは2012年に開始した単一施設の非盲検観察研究で、毎診察時に疾患活動性や機能障害、有害事象を記録するとともに、年に1回の「RA調査」でX線による関節破壊の評価や骨粗鬆症検査、患者報告によるフレイル/サルコペニアや精神状態についての情報も収集している。

 2012年~21年に年1回のRA調査に参加した患者1,156例(累積総数5,070例)を対象とした。背景を見ると、平均年齢は2012年の62.9歳から2021年には65.9歳に上昇。60歳未満の割合は20%未満となった。メトトレキサート(MTX)の使用割合は、2012年の70.8%が2012年には64.3%へと若干減少。他の薬剤の使用割合は、グルココルチコイド(GC)が40.5→18.6%と減少した一方で、b/tsDMARDは29.5→53.2%と増加した。

 疾患活動性の推移を見ると、DAS28-CRPの平均値はb/tsDMARD治療の患者数が増えた2012~15年に急激に低下し、その後安定的に推移した。DAS28-CRP寛解を達成した患者の割合も徐々に増加し、2021年には79.7%に達した。同様にClinical Disease Activity Index(CDAI)も低下し、CDAI寛解を達成した患者の割合はこの10年で25.1→48.1%に増加した。機能障害に関しては、Health Assessment Questionnaire(HAQ)中央値が0.69→0.25に改善した。

b/tsDMARDの新規処方1,816例の縦断的データ

 2012~21年には多くのb/tsDMARDが新たに上市されたので、藤井氏らはb/tsDMARDの治療転帰に関する縦断データも解析した。10年間におけるb/tsDMARDの新規処方数は1,816例で、そのうち820例はb/tsDMARD未使用例(ナイーブ群)、996例は他のb/tsDMARDからの切り替え例(スイッチ群)だった。

 b/tsDMARDの作用機序で分類すると、IL-6阻害薬(トシリズマブとサリルマブ)の使用割合はナイーブ群が約10%、スイッチ群が約20%で、10年間ほぼ横ばいだった。

 TNFα阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル:いずれもバイオシミラーを含む)とCTLA4-Ig(アバタセプト)の使用割合は、ナイーブ群、スイッチ群とも2012年に比べ、2021年には減少した。一方、JAK阻害薬は2014年にスイッチ群で初めて処方され、最近ではナイーブ群の20%以上に処方されていた。

CTLA4-Igを基準に有効性の推移を比較

 次に藤井氏らは、交絡因子を調整するため、傾向スコアマッチングと混合効果モデルを用い、CTLA4-Igを基準(reference)としてb/tsDMARDの有効性を比較した。ただし、ナイーブ群ではJAK阻害薬を1次治療として使用した例は少なかったので除外した。

 解析の結果、ナイーブ群ではCTLA4-Igに比べ、TNFα阻害薬により治療開始後1カ月および2カ月時点のDAS28-CRP(1カ月後:P=0.0009、2カ月後:P=0.0379)とCDAI(同P=0.0012、P=0.0241)が有意に改善した。IL-6阻害薬は1、2、6、12カ月時点のDAS28-CRP(P=0.0052、P=0.0006、P=0.0017、P=0.0002)、2、6、12カ月時点のCDAI(P=0.0377、P=0.0339、P=0.0021)が有意に改善した。HAQに関しては、3剤とも同等の改善を示し、有意差はなかった。スイッチ群では、DAS28-CRP、CDAI、HAQのいずれについても、薬剤間に差はなかった。

 治療継続率については、ナイーブ群では作用機序の異なる薬剤間に差はなかったが、スイッチ群ではIL-6阻害薬の継続率が有意に高く(P<0.005)、これは既報と一致する結果であった(Arthritis Res Ther 2020; 22: 142)。

 以上の結果を踏まえ、藤井氏らは「われわれの知る限り、混合効果モデルを使ってRA患者における疾患活動性と機能障害の年間改善率を明らかにした研究はこれが初めてである。KUMARAコホートの10年間の治療戦略と転帰の推移を検討した結果、b/tsDMARD使用の増加とともにRAの転帰が改善したことがリアルワールドデータによって確認された」と結論している。

 (木本 治