中国・General Hospital of Central Theater Command of People's Liberation ArmyのJiayue Tong氏らは、糖尿病足潰瘍を有する2型糖尿病患者の大腿動脈内に血栓溶解薬のウロキナーゼを投与した結果、完全閉塞率が有意に改善したとBMJ Open Diabetes Res Care(2024; 12: e003414)に報告した。
ウロキナーゼを7日間、点滴動注
糖尿病足潰瘍は機能障害をもたらす糖尿病合併症の1つであり、非外傷性下肢切断の重大な危険因子だ。糖尿病に関連した下肢切断の約80%では足潰瘍が先行し、医療者や患者にとって大きな負担となっている。
Tong氏らは今回、Wagnerグレード1~3の足潰瘍を有する30~80歳の2型糖尿病患者195例を登録。全例に食事指導と1カ月間のインスリン療法を行った後、創傷部位のデブリドマン+定期的なドレッシング交換の通常療法群97例(男性69例、平均年齢72±4.6歳、平均糖尿病罹病期間14±3.1年)または、通常療法+7日間のウロキナーゼの大腿動脈内投与を行う大腿内血栓溶解療法群98例(同71例、72±4.8歳、14±3.0年)にランダムに割り付け、平均6.5年間追跡した。
大腿内血栓溶解療法群には、まず超音波ドプラ検査を施行して下肢の動/静脈の状態を評価。静脈血栓が見られた場合は肺梗塞を回避するため、下大静脈にフィルターを留置した。次に、鼠径部から動脈カテーテルを経皮的に挿入し、下肢の潰瘍病変に届くよう膝下動脈の先端まで押し進め、カテーテルは大腿の外側から固定。患者はこの状態を維持したまま7日間、仰臥位でベッド上安静とした。カテーテルの留置が終わった段階でウロキナーゼ20万~40万単位をカテーテルから注入。その後は0.9%の生理食塩数100mLに溶解し4mL/時で動脈ポンプを使って点滴動注した。
主要評価項目は、治療後1カ月時点および追跡期間終了時点における潰瘍の完全閉塞率(完全治癒率)。副次評価項目は、潰瘍完全治癒までの期間、潰瘍再発率、下肢切断率、追跡期間中の心血管イベントおよび心血管死などとした。
完全閉塞率は17.5% vs. 72.4%、治癒までの期間も短縮
試験の結果、治療後1カ月時点の完全閉塞率は通常療法群の17.5%に対し、大腿内血栓療法群では72.4%と有意に高かった(P<0.001)。追跡期間終了時点でも、通常療法群に比べ大腿内血栓療法群は良好な完全治癒率を維持していた〔ハザード比(HR)3.42、95%CI 2.35~4.98、P<0.0001〕。
両群の完全治癒例を対象に、潰瘍治癒までの期間を比較したところ、大腿内血栓療法群では通常療法群に比べ著明に短かった(P<0.05)。また完全治癒例の追跡期間中における潰瘍再発率は、通常療法群の24.4%に対し、大腿内血栓療法群では14.1%と低かったが、有意差はなかった(P>0.05)。
下肢切断率(21.7% vs. 10.2%、P<0.05)、心血管イベント発生率(59.8% vs. 48.0%、P<0.0001)も、通常療法群に比べ大腿内血栓療法群で有意に低かった。全死亡率に両群で有意差はなかったものの、心血管死は大腿内血栓療法群で有意に少なかった(P=0.0241)。
局所の皮膚の酸素化、末梢神経障害、糖脂質代謝に関しても、大腿内血栓療法群で有意な改善が見られた(全てP<0.05)。
ベッドでの安静が治癒促進に関係した可能性も
以上の結果を踏まえ、Tong氏らは「低用量ウロキナーゼの持続的投与による大腿内血栓療法は、糖尿病足潰瘍の完全治癒率を改善するだけでなく、治癒までの期間を短縮することが確認された」と結論。
研究の限界としては、①単施設の非盲検試験に起因するバイアスの可能性、②比較的小さいサンプルサイズ、③70%以上が男性であり知見の一般化可能性に劣る、④7日間のベッド上安静そのものが大腿内血栓療法群での治癒を促進した可能性は否定できない―を挙げている。
(木本 治)