中国・Nanjing First Hospital Nanjing Medical UniversityのJianhua Ma氏らは、アジア太平洋地域の2型糖尿病患者を対象に、二次/三次治療としてのチルゼパチドの有効性と安全性を検討した第Ⅲ相非盲検ランダム化比較試験(RCT)SURPASS-AP-Comboの探索的サブ解析の結果をDiabetes Obes Metab(2024年2月1日オンライン版)に報告。「チルゼパチドの有効性と安全性はベースラインのBMIにかかわらず確認された」と述べている。
3つの用量のチルゼパチドとインスリグラルギンを比較
中国、韓国、オーストラリア、インドの66施設で実施されたSURPASS-AP-Combo試験は、インスリン使用経験のない18歳以上の2型糖尿病患者907例をチルゼパチド5mg群、10mg群、15mg群とインスリングラルギン群の4群にランダムに割り付け、40週時点のHbA1cおよび体重の変化量を評価したもの。インスリングラルギン群に対し、3用量のチルゼパチド群はいずれもHbA1cおよび体重が有意に改善した(Nat Med 2023; 29: 1500-1510)。
チルゼパチドに関しては複数のグローバル試験(SURPASS-1~6)が行われているが、参加者の大半は世界保健機関(WHO)基準で肥満(BMI 30以上)に分類される。一方、SURPASS-AP-Combo試験では、BMIが相対的に低い参加者も含まれていたため、Ma氏らはベースラインのBMIの違いによるチルゼパチドの効果を検討する事後解析を実施した。
いずれのBMI群でもHbA1cと体重は改善
Ma氏らはまず、参加者をベースラインのBMIで25未満群(正常体重群:235例、25.9%)、25~30未満群(過体重群:458例、50.5%)、30以上群(肥満群:214例、23.6%)に分類した。
40週時点のHbA1cの変化量をBMI別に見ると、BMI 25未満群ではインスリングラルギン群の-1.0%に対し、チルゼパチド5mg群は-2.3%、同10mg群は-2.2%、同15mg群は-2.5%、BMI 25~30未満群ではそれぞれ、-1.0%、-2.3%、-2.4%、-2.5%、BMI 30以上群では、それぞれ-0.8%、-2.0%、-2.8%、-2.5%だった〔全てP<0.001 (対インスリングラルギン群)〕。
同様に40週時点の体重の変化量をBMI別に見ると、BMI 25未満群ではインスリングラルギン群で2.4%増加(P<0.05、対ベースライン)したのに対し、チルゼパチド5mg群では-5.5%、同10mg群では-10.8%、同15mg群は-9.9%(全てP<0.001、対ベースライン)、BMI 25~30未満群ではそれぞれ、2.5%(P<0.01)、-7.0%、-8.2%、-9.3%(全てP<0.001)、BMI 30以上群ではそれぞれ、1.0%(有意差なし)、-6.1%、-9.9%、-9.2%だった(全てP<0.001)。
チルゼパチドの安全性プロファイルに関しても、ベースラインのBMI別による差はなかった。最も頻度の高い有害事象は消化器関連症状と食欲減退だったが、治療中止に至る例はほとんどなかった。
アジア人の「正常体重」2型糖尿病は含まれていない
以上の結果を踏まえMa氏らは「アジア太平洋地域の2型糖尿病患者を対象としたSURPASS-AP-Combo試験のサブ解析の結果、ベースラインのBMIにかかわらず、チルゼパチドは有意なHbA1cの改善と体重減量をもたらすことが確認された」と結論。
一方、アジア太平洋地域における正常体重の基準はBMI 23未満だが、SURPASS-AP-Combo試験の登録基準はBMI 23以上であったため、今回の解析ではBMI 25未満を正常体重とするWHOのカットオフ値を採用したこと、探索的なサブグループ解析によるバイアスが存在する可能性は否定できないことを研究の限界として付言している。
(木本 治)