デンマーク・University of CopenhagenのMette Gyldenløve氏らは、欧米で重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬として承認されているホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害薬roflumilast経口製剤の中等症~重症の尋常性乾癬患者に対する有効性と安全性をPsoriasis Treatment with Oral Roflumilast (PSORRO) 試験で検討し、主解析の結果を昨年(2023年)報告した(関連記事:「中等症~重症の乾癬に経口roflumilastが有効」)。今回、同試験の事後解析結果をJ Am Acad Dermatol(2024年2月29日オンライン版)に発表。「経口roflumilast投与により体重減少と食欲抑制効果が認められたが、血圧や脂質値、HbA1cなどには影響を及ぼさないようだ」と述べている。

平均体重100kg以上、BMI32以上の乾癬患者46例が対象

 乾癬患者は肥満を合併しやすく、肥満メタボリックシンドローム乾癬の増悪因子ともいわれている。PSORRO試験では経口roflumilastの中等症~重症乾癬に対する有効性が確認されたが、薬剤関連有害事象として消化管症状が認められた。

 そこでGyldenløve氏らは今回、同試験の事後解析としてroflumilast群(23例)、プラセボ群(23例)における体重や食欲、心血管代謝パラメータの変化を検討した。

 roflumilast群とプラセボ群のベースラインの患者背景は、平均年齢がそれぞれ38.0歳 vs. 39.0歳、体重が102.0kg vs. 105.1kg、BMIが33.3 vs. 32.2、ウエスト周囲長が106.8cm vs. 109.0cmで、roflumilast群の3例(13%)、プラセボ群の2例(9%)が2型糖尿病だった。

24週時点の体重が4%減少

 46例中42例が12週まで(二重盲検期間)、38例が24週まで(非盲検期間:全例にroflumilastを投与)の試験を完遂。12週時点における体重変化量の中央値はプラセボ群の0%(0.0kg)に対し、roflumilast群では-2.6%(-2.3kg)だった(P<0.01)。

 24週時点における12週時点からの体重変化量の中央値は、当初のプラセボ群で-1.3%(-1.3kg)、roflumilast群で-4.0%(-3.2kg)だった。

 食欲減退の報告はプラセボ群に比べroflumilast群で多かったが、有意差を認めたのは4週時点のみで(26% vs. 61%、P=0.02)、24週時点では差は消失した(35% vs. 35%、P=1.0)。悪心、腹痛、下痢なども最初の1週間はroflumilast群で多い傾向を認めたが、その後は減った。

体重・食欲に対する作用が乾癬の治療効果と関連か

 脂質プロファイル(LDL・HDLコレステロール、トリグリセライド)、HbA1c、高感度C反応性蛋白、クレアチニン、ALTなどの変化に両群で差はなかった。

 以上の結果を踏まえ、Gyldenløve氏らは「経口roflumilastは体重減少をもたらし、食欲を抑制することが示唆された。肥満との関連が強い乾癬に対する同薬の有効性を裏付けるエビデンスといえるかもしれない」と結論。その上で、「サンプルサイズの小ささと試験期間の短さ、副次評価項目の解析であることは本研究の限界だが、①PSORRO試験は製薬企業からの資金提供を受けたものでない、②二重盲検ランダム化試験である、③脱落率が低い、④欠落データがほとんどない―ことなどは強みである」と付言している。

木本 治