乾癬性関節炎(PsA)では、関節炎や付着部炎などの不可逆的な関節障害が生じ、著しいQOLの低下を招く。治療には非ステロイド抗炎症薬、従来型合成抗リウマチ薬(csDMARD)、生物学的製剤などが用いられるものの、長期にわたる最小疾患活動性(MDA)の維持は難しく、抵抗例や不耐例も少なくないことから、長期的な有効性を発揮する治療薬へのニーズは強い。2019年に開始された第Ⅲ相国際多施設ランダム化試験KEEPsAKE1では、ヒト化抗ヒトインターロイキン(IL)-23p19モノクローナル抗体リサンキズマブの活動性PsAに対する長期的な有効性、安全性および忍容性についての検証が進められている。デンマーク・Copenhagen University HospitalのLars E. Kristensen氏らは、既に報告された24週時、52週時に続き、100週時においても同様の有効性および忍容性が確認されとRheumatol Ther2024年3月18日オンライン版)に発表した。

全体の85.9%が100週までの治療を完遂

 KEEPsAKE1は、1種類以上のcsDMARDによる治療で効果が不十分または不耐の活動性AsP患者を対象とし、24週までは二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(期間1)、24週以降は非盲検ランダム化較試験(期間2)として継続されている(Ann Rheum Dis 2022; 81: 225-231Rheumatology 2023; 62: 2113-2121)。

 主要評価項目は、米国リウマチ学会(ACR)のPsA評価基準(8項目)においてベースラインから20%以上の改善(ACR20)、副次評価項目はPsA modified Total Sharp Score(PsA-mTSS)のベースラインからの平均変化量(0.5未満)、健康評価質問票を用いた機能障害指数(HAQ-DI)の改善(スコアの低下)、MDAなどの達成率とし、全項目について100週時まで評価した。

 期間1では、活動性AsP患者964例をリサンキズマブ(150mg)群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付け、0、4、16週目に投与した。そのうち939例(97.4%)が期間2(24週以降)に進み、両群とも12週ごとにリサンキズマブ150mgを非盲検下で投与し、100週時点で828例(85.9%)が治療を完遂した。

100週の達成率、ACR20は60%以上、MDAは35%以上

 主要評価項目である100週時のACR20達成率は、リサンキズマブ群で64.3%と24週時(57.3%)、52週時(70.6%)と同程度に維持されていた。一方、プラセボ群では24週時の33.5%に比べ、52週時は63.7%、100週時は62.1%と、リサンキズマブへの切り替え後に達成率が上昇した(P<0.001)。また、両群とも52週時にACR20を達成した患者の81.2%が100週時にも改善を維持していた。

 PsA-mTSSのベースラインからの平均変化量については、サンキズマブ群で0.34(95%CI 0.17~0.28)、プラセボ群で0.45(95%CI 0.28~0.62)と両群で0.5未満を達成し、24週時および52週時と同様、100週時においても関節破壊の進行は見られなかった。さらに、付着部炎や指炎があった患者では100週時でも症状の改善が維持されていた。

 患者評価に基づく項目として、HAQ-DIはリサンキズマブ群で-0.41、プラセボ群で-0.36とスコアの低下(=改善)が見られ、臨床的に有意な改善を得られた割合はそれぞれ54.9%(95%CI 50.0~59.7)、48.4%(95%CI 43.5~53.3)で、いずれも24週時より良好で52週時と同等だった(全てP<0.001)。この傾向は、患者による疼痛評価やQOLの改善においても同様であった。

 また、100週時におけるMDAの達成率を見ると、リサンキズマブ群は38.2%で24週時(25.0%)より高く、52週時(38.3%)と同等、プラセボ群は35.2%で24週時(10.2%)および52週時(28.0%)に比べ上昇した。さらに、52週時のMDA達成患者のうち、100週時においてもMDAを維持していた割合はリサンキズマブ群で75.5%、プラセボ群で78.2%だった。

安全性プロファイルは既報と一貫、忍容性に問題なし

 100週時のデータ解析の結果、治療関連有害事象(TEAE)の発生率は130.1件/100人・年で24週時の177.6件/100人・年より低下した。主なTEAEの発生率は4.0件/100人・年で、新型コロナウイルス感染症(8.0件/100人・年)が最も多く、次いで鼻咽頭炎(4.3件/100人・年)、投与中止に至ったTEAEは2.1件/100人・年であった。重篤なTEAEの発生率は7.6件/100人・年で、100週までに2件の重大な心血管イベントが発生したが、リサンキズマブとは関連性なしと判断された。また、死亡例は24週時と52週時の2例に加え、100週時で新たに4例が発生したが、いずれも同薬との関連性は認められず、Kristensen氏は「安全性プロファイルは既報と一貫しており、忍容性に問題はなかった」と述べている。

 以上の結果を踏まえ、同氏は「100週時においても52週時と同等の結果が得られたことから、リサンキズマブの忍容性は高く、長期的な有効性と安全性が示された。」と結論している。同試験は引き続き、解析が進行中である。 

 なお、同試験と並行して行われているKEEPsAKE2試験では、1種類以上のcsDMARDまたは生物学的製剤の一方あるいは両方で効果が不十分/不耐性の活動性PsA患者において、リサンキズマブの長期的な有効性と安全性が示され、100週時の結果が報告されている(Rheumatol Ther 2024年3月18日オンライン版)。

山路唯巴