日常的にたんの吸引などの支援を必要とする「医療的ケア児者」の家族が店員を務めるカフェが仙台市泉区にある。「カフェ・ドゥ・チルミル」は日々、子どもやきょうだいのケアに当たる家族の「働きたい」との思いに応えようと、市内の社会福祉法人が企画。店員と客の交流のほか、ケア児者家族同士のつながりも生んでいる。
 カフェは4月末、同法人「あいの実」が複合福祉施設の敷地内に開店した。店員は、ケア児者が施設や特別支援学校などで過ごしている時間帯に勤務。ケア児者の急な体調不良で出勤できなくなった場合は、施設職員がサポートに回る。
 店の売りは、キャンプ道具を使ったコーヒー焙煎(ばいせん)やホットサンド作り体験だ。あいの実によると、ケア児者家族には就労経験が少ない人が多く、「お客さん自身に豆を煎ってもらうことで、負担を軽減する工夫」だったが、「キャンプ気分が味わえる」と人気に。店員は道具の使い方を説明しながら客との交流を楽しんでいる。
 店員の一人、高橋邦子さん(55)の次男、幸太郎さん(24)は脳性まひで呼吸用チューブの交換やたんの吸引などが欠かせない。邦子さんが仕事をするのは約30年ぶりといい、「毎日が楽しい。夫からあしたの予定を聞かれたとき、『ふふっ、仕事』とにやけながら伝えている」と笑顔を見せる。
 あいの実は今後、店員の就労率をデータ化して分析、企業に提供することを検討しているという。ケア児者家族の働く場を増やすことにつなげたい考えだ。
 あいの実の久保潤一郎専務理事(50)は「カフェのことを知り、客として訪ねてくるケア児者家族もいる。そうした家族同士が気軽に相談できる場にもなってほしい」と期待する。 (C)時事通信社