治療・予防

皮膚の下で体毛癒着
~毛巣洞(日本医科大学武蔵小杉病院 久保村憲病院講師)~

 お尻の割れ目(臀裂部=でんれつぶ=)付近にできる毛巣洞(もうそうどう)。患者数は多くないが、職業病の側面があり注意が必要だ。日本医科大学武蔵小杉病院形成外科の久保村憲病院講師は「炎症が長引くと深刻な状態を招きかねないので、早めの治療が大切です」と話す。

臀裂部にできた毛巣洞

臀裂部にできた毛巣洞

 ◇長時間の座位がリスク

 毛巣洞は、病名が示すように皮膚の下に袋状の空洞ができ、そこに体毛が埋もれて鳥の巣のような塊になって炎症を起こす病気だ。臀裂部(肛門と尾骨の間)、へそ、脇、後頭部、手指の間など体毛の生えている場所にできるが、臀裂部が圧倒的に多い。

 久保村講師によると、かがんだり座ったりすると臀裂部の皮膚が引っ張られて、毛根を包む毛包が破れ、毛穴が開く。そこにあかなどがたまり、体毛は抜け落ちずに埋もれ、皮膚の深部で癒着を起こす。「動作に伴って毛穴は徐々に広がり空洞が形成され、細菌感染などによる炎症を繰り返すことで病巣が大きくなります」

 有病率は1300~3000人に1人と決して高くはないが、肥満で毛深い人、タクシーやトラックの運転手など長時間座って過ごす人に多く見られる。米国では軍用車両を運転する兵士に多いため、ジープ病とも呼ばれている。また、理容師・美容師やペットのトリマーらに他人や動物の毛が刺さって毛巣洞が起きる例もあるという。

 ◇予防法は脱毛

 痛み、血液が混じったうみ(血うみ)、熱感など急性症状が突然表れるのが特徴だ。自然に治まっても安心できない。長期間にわたって慢性的な炎症が続くと異常な細胞が発生して皮膚がんを生じる下地ができる可能性があるからだ。

 治療は手術が主体だが、痛みやうみがあれば抗菌薬、抗炎症鎮痛薬などでまず症状を抑える。状態が落ち着いてから根治手術を行う。術後1カ月程度は、傷が開かないように座る姿勢は控える。

 「予防には脱毛が効果的です」。かみそりなどを使ってそると毛包炎など皮膚疾患の原因になるので勧めていない。また、除毛クリームでは完全な脱毛は望めない。保険適用外となるが、レーザー脱毛は効果が期待できるという。

 「痛みや血うみなど、気になる症状がある場合は形成外科か皮膚科で早めの受診をお勧めします。症状が治まったからといって放置しないことが大切です」と久保村講師は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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