能登半島地震で被災した奥能登地域の小・中学校にはスクールカウンセラーが派遣され、児童生徒や教職員のメンタルケアが続く。これまで延べ160人超が現地入りし、「眠れない」「当時を思い出してつらい」など心身の不調を訴える声に耳を傾けてきた。地震発生から半年が過ぎたが、心の傷はいまだに癒えず、専門家は「支援の継続が必要だ」と話している。
 日本臨床心理士会によると1月下旬以降、スクールカウンセラーを石川県輪島市や珠洲市、能登町に派遣。当初は個別面談が中心だったが、現在は日常生活のストレスや悩みの対処法を集団で学ぶ「心のサポート授業」も行っており、7月1~5日には10こま以上が開かれた。
 愛知県から派遣された臨床心理士広田晋平さん(49)は、輪島中学校で不安や緊張を和らげる対処法を伝えた。輪島市の一部中学生は3月下旬まで白山市への集団避難を経験し、進学を機に市外に転居した生徒も。地震が生徒の心身に与えた影響は大きく、避難訓練などに拒否感を示すケースも報告されている。
 広田さんは「非日常が続いたことで、今後気持ちが落ち込む場面が出てくるのではと心配している」と懸念。教職員からも不眠や精神的疲労を訴える声が寄せられ、医療機関の受診を促したこともあるという。
 災害時のメンタルケアに詳しい、桜美林大の池田美樹准教授は「災害時のストレスでは、孤立が回復の妨害要素になる。人とのつながりや、『自分ならできる』という自己効力感を強化することが重要だ」と指摘。一方、トラウマ(心的外傷)を訴えるケースも確認されており、池田准教授は「地震を思い出してつらくなる児童生徒もいる。奥能登地域の中・長期的な支援が必要だ」と話している。 (C)時事通信社