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不織布と一体化した大型のファインファイバーシートを開発

花王株式会社(ニュースリリース)
広い面や動きが大きい部位などでも使用可能に

花王株式会社(社長・長谷部佳宏)スキンケア研究所、加工・プロセス開発研究所は、大型のシート状にファインファイバーを紡糸する技術を確立し、その技術を用いて不織布にファインファイバーを吹き付けた2層構造のファインファイバー積層シートを開発しました。このシートは、ファインファイバー膜が持つ特徴を保持しつつ、高い強度と伸縮性があり、広い面や動きが大きい部位も覆うことができるため、今まで使えなかった用途への応用が期待できます。


ファインファイバー積層シートの製造と加工イメージ

今回の研究成果の一部は、第43回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(2025年8月16~17日・大阪府)にて、発表予定です。
背景
花王は2018年に、直径が1ミクロン以下の極細繊維を肌に吹き付けることで、繊維が折り重なった極薄膜を肌上に形成する「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)*1」を発表しました。この極薄膜は皮膚を閉塞せず、柔軟性があり、高い毛管力で膜全体に製剤を広げる効果もあります。花王は、肌上でファインファイバー膜とスキンケア製剤を組み合わせることで、肌の水分蒸散の抑制や、摩擦などの外部刺激から肌を守る機能を報告してきました*2。
しかし、これまでの直接肌に吹き付ける方法は、凹凸のある部位や動きの多い箇所、広い範囲を覆うことには適していません。そこで、適用範囲や用途の拡大をめざし、大型のファインファイバーシートを工業的に生産する技術開発に取り組みました。
*1 2018年11月27日 花王ニュースリリース 「Fine Fiber(ファインファイバー)技術」を開発
*2 2021年1月18日 花王ニュースリリース 「Fine Fiber Technology(ファインファイバーテクノロジー)」肌を守る機能が明らかに

大型のシート状にファインファイバーを紡糸する技術を確立
ファインファイバーは、プラスとマイナスの引き合う力を利用して紡糸するエレクトロスピニング法を応用して作られます。これまで花王は、原料となるポリマーをプラスに帯電させるために溶媒に溶かし、マイナスに帯電した対象物表面に吹き付けて紡糸していました。しかし、この方法ではポリマーが溶媒に薄められているため、一度に吹き付けられる量が少なく、さらに、溶媒を揮発させる必要があるため紡糸スピードを速くすることもできません。
一度に大量のファインファイバーを紡糸することをめざし、花王は、ポリマーを溶媒に溶かさない方法を検討。数あるポリマーの中から加熱すると溶け、冷却すると固化する性質を持つポリプロピレン樹脂を選定し、帯電させるために最適な電荷調整剤を加え、風力も用いて極細の繊維を紡糸する技術を開発しました。この方法では、従来の方法と比較して100倍以上の量のファインファイバーの紡糸が可能です。さらに、繊維の吐出口を複数並べる設備を構築することで、大型のシート状にファインファイバー膜を生産できるようになりました。