治療・予防

ダンスと脳トレで認知症予防
「作業記憶」の維持・向上で

 奈良県立医科大学(奈良県橿原市)医学部看護学科老年看護学の沢見一枝教授らは、高齢者の認知機能低下予防のために、脳のトレーニング(脳トレ)を組み合わせた独自のダンス教室を定期的に開催している。「効果を測定したところ、参加者の認知機能の向上が見られました」と沢見教授は話す。

脳トレとダンスで認知機能の低下を予防する

 ▽作業記憶は加齢で低下

 認知機能の一つである記憶は、脳の海馬で一時的に保存され、必要なものや印象的なものだけが大脳皮質に転送される。記憶のうち、日常生活において何かを実行するために必要なものを「作業記憶」と呼び、脳の前頭前野の働きが影響している。例えば日常会話では、相手の話を一時的に覚え、その内容から意図をくみ取り、話の展開に従って前の不要な情報を整理し、話題を切り替えるといったことを無意識に行っている。作業記憶は40歳ごろから働きが低下する。そのため、物忘れや、情報の整理ができずに会話がちぐはぐになるというようなことが表れ始める。

 沢見教授は、記憶のうちまず低下するのが作業記憶の機能であることから、前頭前野のトレーニングにより作業記憶を維持・向上させることが、認知機能低下の予防につながると考え、ダンスと「脳トレ」を組み合わせたオリジナルのダンスプログラムを考案。県内の公民館などで開催する認知症予防教室で毎回行い、作業記憶の維持にどの程度寄与するか、効果の検証に取り組んでいる。

 ▽認知機能の向上を確認

 「腕を振ると同時に脚を高く上げて足踏みをするなど、左右の腕と脚、あるいは上半身と下半身が違う動きを行う『二重課題』と、記憶力の一つで時間を経て思い出す『遅延再生』という機能に対する脳トレを組み込むことにより、短期間の記憶力である作業記憶だけでなく、それよりやや長めの『近時記憶』を鍛え、認知機能の向上を目指しました」と沢見教授。

 教室では、まず、「みそ汁」「アライグマ」「腕相撲」など食べ物や動物、花の名前など10個の単語を記憶する。振り付けやサビの歌詞を記憶しながら40~50分間ダンスを踊り、その後に先ほど記憶した10個の単語を思い出してもらう。60代から80代までの高齢者40人が参加し、ATCエイジレスセンター(大阪市住之江区)で2018年4月から週1回、合計7回行われた。初回の遅延再生課題の平均正答数は7.2だったが、7回目では8.7まで上昇した。中には、初回の正答数0から7回目には8まで上昇した人もいた。

 「今後は、ダンスの内容をより効果的なものへと発展させていきたい」と沢見教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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