教えて!けいゆう先生

偽医師がデマ発信も
医療情報の見分け方

 あるブログが昨年、物議を醸しました。ブログの運営者は内科医を名乗る人物。医師の視点から、病気を予防するために必要な食事などを紹介していたほか、TwitterやFacebookなどのSNSを上手に利用し、病気と食事に関する情報を発信していました。

 ところが、発信する内容に医学的な誤りが多いことや、特定の健康食品の推奨が妙に多いことを疑問視した多くの医師が、ネット上で注意喚起を始めました。このことがネット上に広く拡散し、多くの人が知るところとなりました。

 すると、その運営者はSNSのアカウントを削除、ブログも閉鎖しました。また、自分が医師だと詐称していたこと、特定の健康食品購入に誘導して広告収入を得るのが目的だったと公表しました。

 本人は取材に対し「医師が栄養について説明すれば、ビジネス上のチャンスがあると考えた」と告白し、購入した方には説明や補償をする考えを示しました。

掲載されている情報に確かな出典が明記されているかチェックしよう

 ◇たとえ医師であっても

 世の中には、医師の視点から見ると思わず首をかしげてしまうような不正確な医療情報は多くあり、そうした間違った情報は閲覧した人に健康被害を与えるリスクがあります。しかし、専門的知識のない方が、信頼できる医療情報を見分けるのは容易ではありません。

 冒頭の例について、もう一度考えてみてください。発信者は内科医を名乗っています。「医師が言うなら本当だろう」と思う人がいても全く不思議ではありません。この例では、医師であるとの詐称が問題になりましたが、たとえ本物の医師であったとしても、常に正確な情報を発信しているとは限りません。

 医学は日進月歩です。

 一昔前に最も効果があるとされていた治療が、のちの研究によって、より効果の高い別の治療に取って代わられることはしばしばありました。知識のアップデートが十分でないと、医師であっても思わず過つことがあるのです。

 では、情報を受け取る側として、こうした難しさにどう対処すればいいのでしょうか。

 ◇情報ソースは明確か

 医療に関する情報を得て、それを行動変容につなげようとする時は、「その情報のソースがきっちり明らかにされているかどうか」に注目していただきたいと思います。

 例えば、公的機関や医療機関の発信する情報を参照しているケースは、信頼性が高いと考えてよいでしょう。公的機関や医療機関の情報は、その機関の責任を背負って発信されており、その分正確性や更新性に十分配慮されていると考えるべきだからです。

 こうした機関の情報は、一般に向けて発信される前に複数の専門家の目を通っている、ということも大きな強みです。医療に関する情報は、たとえ知識が豊富な専門家同士であっても、常に意見が一致するとは限りません。

 病院でも、医師によって「AにすべきかBにすべきか」といった治療方針に関する意見が割れ、議論がぶつかり合うことは多々あります。

 人体は複雑な仕組みで動いています。「常にAという治療が効く、Bという治療が効かない」といったシンプルな理論は成立しません。「いずれが正解とも間違いとも言えない」といった場面はよくあるのです。

 よって、公的機関や医療機関から発信される情報は、こうした背景を踏まえた上で、複数の専門家が議論した末にようやくコンセンサスが得られた成果物だと判断すべきです。医療に関する情報が多くの人の目に触れる前には、本来これだけの障壁を乗り越える必要があるのです。

 そう考えれば、冒頭の例のような、たった一人の医師が信頼できる情報ソースを提示せず個人の意見として発信した情報は、かなり慎重に取り扱うべきだということが分かると思います。

 医療に関する情報を扱う時は、以上のことに十分留意していただければと思います。(医師・山本健人)

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