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遠隔医療システムを独自開発
海外にも提携拡大-旭川医科大学

 旭川医科大学は北海道の道北・道東の医療過疎解消を目的に国立新設医科大学の第1号として1973年に設立された。旭川医大が独自に開発した遠隔医療システムは、国内のみならず海外にも提携先を拡大、国際的な注目を集めている。開発の立役者である吉田晃敏学長は「グローバルな医療を目指して世界戦略を展開しなければ、時代の波に乗り遅れてしまう。ローカルなニーズに対応しつつ、グローバルに行動できる医療人の育成に取り組んでいきたい」と話す。

 ◇「人」ではなく「情報」を動かす

 旭川医大は、離島やへき地の多い北海道の地域医療の質を向上させるため、25年前から遠隔医療システムの開発に取り組んできた。

インタビューに応える吉田晃敏学長

 現在は、道内6病院と連携して世界初となる「クラウド医療」を展開。インターネット上のクラウドに送られてきた患者情報を旭川医大の専門医がスマートフォンやタブレット端末で閲覧し、診断や治療方針のアドバイス、救急搬送の必要性の有無を判断している。

 「患者さんが日本のどこに住んでいても世界最高水準の医療を受けられる、医療格差のない社会を目指したい」と吉田学長。情報技術の急速な進歩によって、遠隔医療で扱う画像の質、送信スピードが大幅に向上。昨年は世界で初めて、8Kの医療画像の開発に成功した。「医療画像は鮮明であることが重要。8Kになると直径1.5ミリメートルの網膜の血管までが明確に確認できます」

 遠隔医療への取り組みは海外からも注目を集め、現在、国内50カ所、国外9カ所が遠隔医療システムでつながっている。

 吉田学長は「医師偏在を解消するために医師を派遣するのは限界がある。患者の通院の負担も大きい。人を動かすのではなく、情報を動かせば、みんなの負担が軽減され、大幅な医療費削減にもつながる」と強調する。

 ◇海外の医師も教育

 新設予定の国際医療支援センターは、海外の医師を受け入れ日本の医療技術を研修する。動物を使った手術の練習や先端医療技術が習得できるトレーニングセンターも整備する予定だ。

 「遠隔医療を行うにも、現地の医療水準が不十分だとアドバイスも役に立ちません。病院を作ってほしいという依頼もありましたが、むしろ大切なのは教育です」。昨年、アジアで最大の病院経営グループと医師、看護師など医療従事者を旭川で研修させる取り決めを結んだ。

旭川医科大学の教室

 ◇海外の患者を治療、健康診断も

 患者や健常者が治療・健康診断のためにやってくるのを受け入れていく予定だ。北方四島からドクタージェットで搬送されてきた患者を受け入れる方針も決めたほか、アジア諸国からの受け入れについても交渉が始まった。

 「中国ではPET検査(陽電子放射断層撮影)に3カ月待ちという状況。いくら遠隔医療システムで情報を伝送するシステムが整っても、現地で検査が受けられないのでは仕方ありません。定期的に患者さんを受け入れて補っていこうと思います」

 海外との連携強化は、先を見据えて先手を打つ吉田学長の経営戦略の一つでもある。「25年後には人口が北海道全体で23%減、最高70%減になる地域もある。ドバイのように海外から人が集まるような仕組みが必要です」

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